2014 Fiscal Year Research-status Report
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24540387
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
森 道康 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 副主任研究員 (30396519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椎八重 航 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (20273253)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超伝導 / 強磁性 / ジョセフソン効果 / フィスケ共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性体を介するジョセフソン接合による高感度伝導制御を実現するための条件探索として、材料や形状の変化に対する伝導特性の研究を行った。これまでの研究成果において、強磁性体中の磁壁の振動や、磁壁の幅が振動する状態(ブリージングモード)が、階段状の電流電圧特性となって現れることを示した。このような特性が得られる背景には、超伝導秩序変数が振幅と位相によって定まり、この位相が電磁場と結合する事実がある。一方、接合の大きさが超伝導体の磁場侵入長より大きくなると、接合内に電磁場の共振モードが生まれ、フィスケ共鳴と呼ばれる共鳴構造が電流電圧特性中に現れる。このフィスケ共鳴では、接合に与える静磁場の大きさによって、共鳴構造が現れる電圧の値が変わる。このような接合内における電磁場の共振モードは、形状によって敏感に変化する可能性が考えられる。従って、形状依存性を調べておくことは、高感度伝導制御の実現にとって重要な課題である。 強磁性体で隔てられた超伝導体の接合を考え、強磁性体の厚みが不均一な場合の電流電圧特性を、これまでの成果を基礎に据え計算した。等価回路模型を用い、与えられた接合形状における接合内の超伝導秩序変数の位相に対する運動方程式と、強磁性体の線形化した運動方程式を連立させて解くことで、電流電圧特性を求めた。その結果、通常知られているフィスケ共鳴以外に、複数のフィスケ共鳴構造が表れることが分かった。これら複数のフィスケ共鳴は、強磁性共鳴に対応するものであり、磁化の運動に起因するものである。そして、強磁性共鳴と接合内の電磁場モードは、互いに結合した複合モードになっていることが、電圧依存性から分かった。また、接合面に垂直な面に対して完全反対称な形状の場合、フィスケ共鳴構造が一部制限されることも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁性体の形状依存性の一部を明らかにすることができた。磁化の運動と接合内の電磁場モードが結合した形で電流電圧特性に現れる点は興味深い。これらの結果も含め、多数の論文を認知度の高い学術誌で出版することが出来た。また、国際会議や学会で、招待講演を含め多数成果発表を行った。また、研究成果の一部はプレス発表を行い、新聞などで紹介された。従って、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
強磁性体の磁化に時間変化や空間変化が伴うとき、磁性体に固有の電磁場が生じる。実際、それは磁壁の運動に伴う起電力として観測されている。形状変化は磁化の運動に起因する電磁場も伴う可能性がある。磁気渦構造が運動している場合など、これらの運動を超伝導接合を用いて高感度に観測する方法を研究する。磁気渦構造は、ある種の金属では格子を組むことが知られており、それらを応用する研究が急速に進展していることから、その運動を高精度かつ高感度に測定する手段の提案は重要である。
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Causes of Carryover |
年度末に予定していたアメリカ物理学会での成果発表が、同じ時期に別の共同研究に参加しなければならず、アメリカ物理学会に参加が出来なくなった。このため、出張旅費分の未使用額が発生した。別の共同研究とは、中性子を使う実験研究で、そのビーム割り当ての時期は予見できないものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカ物理学会で予定していた成果発表を、次年度に開催される超伝導に関する国際会議(The 20th International Conference on Magnetism)で行うこととし、その出張旅費に充てたい。
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Research Products
(17 results)