2012 Fiscal Year Research-status Report
渦の非モード不安定性とバイパス遷移の数理:流れの安定性の統合理論の構築に向けて
Project/Area Number |
24540391
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 裕司 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70261469)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 渦 / 非モード安定性 / バイパス遷移 / 遷移的成長 / WKB安定性解析 / 流れのの安定性理論 |
Research Abstract |
①モデル渦の非モード不安定性の理論解析:一般的な渦構造の非モード不安定性の役割と数理構造を解明するためのステップとして、モデル渦として2次元Taylor-Green渦を選び、一般化安定性解析を行った。パラメタ共鳴不安定性(楕円型不安定性、双曲型不安定性)の有無に関係なく、非モード不安定性による遷移的成長が波数の広い範囲において普遍的に存在することを示した。また、遷移的成長がTaylor-Green渦のひずみ場によって引き起こされることを明らかにした。非モード不安定性による最大エネルギーゲインは、時間が大きくなるとモード不安定性による指数的エネルギー成長と同様の振る舞いをすることも確認された。 ②非モード不安定性のWKB安定性解析:WKB安定性解析では短波長の波束型の擾乱(局所擾乱)の成長を問題とする。数値的に局所擾乱の成長を捉える方法を確立するために、楕円流における局所擾乱の不安定成長過程を直接数値シミュレーションにより調べた。解析的に得られる波数ベクトルの共鳴角や不安定成長率が、直接数値シミュレーションによる結果とよく一致することを確認した。また、非線形過程を経て乱流に至る過程を明らかにした。これにより、数値的にWKB安定性を調べる方法を確立することができた。 ③直接数値シミュレーションの準備:楕円流における局所擾乱の不安定成長過程の直接数値シミュレーションは、埋め込み境界法の一種である Volume Penalization 法とスペクトル法のカップリングにより行った。この手法は、2次元Taylor-Green渦の不安定性および航空機の後流渦の不安定化の直接数値シミュレーションに応用することができる。前者については必要な変更点をリストアップし、直接数値シミュレーションの準備を行った。後者については準備を完了し、テスト計算により、手法の正当性を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、渦の安定性における非モード不安定性のメカニズムとバイパス遷移の役割を解明すると同時に、流れの安定性の統合理論を構築することである。モデル渦の非モード不安定性の理論解明においては、モデル渦を2次元Taylor-Green渦に変更することで、パラメタ共鳴不安定性(楕円型不安定性、双曲型不安定性)と遷移的成長の競合、さらには遷移的成長の物理的メカニズムに関する知見を多く得ることができ、一般化安定性解析を深く進めることができた。渦度分布の違いに対する依存性は次年度以降の課題である。また、非モード不安定性のWKB安定性解析においては、流れの安定性の統合理論の構築に向けて、数値的に局所擾乱の成長を捉える方法を確立することができた。直接数値シミュレーションの準備においては、モデル渦および後流渦の不安定化の直接数値シミュレーションの次年度以降の実施に向けて、その準備を完了することができた。次年度以降、モデル渦における局所擾乱の不安定成長過程について調べることで、差分回転渦の渦度の小さい周辺部における強い指数不安定性について検証する。 総じて初年度の達成度は良好と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
①モデル渦の非モード不安定性の理論解析:一般的な渦の非モード不安定性のメカニズムを解明し、応用上重要な航空機の後流渦における非モード不安定性の役割を明らかにするため、航空機の後流渦モデルの安定性解析を行う。航空機の後流渦には一般に軸流が存在するため、これを考慮したモデルを取り扱い、航空機の後流渦の不安定化過程を理論的に解明していく。 ②直接数値シミュレーションによる検証:本年度準備したプログラムを用いて、直接数値シミュレーションによる検証を行う。 (1)モデル渦の非モード不安定性の検証と非線形段階に至る過程の解明:初期擾乱として安定性解析により得られる不安定擾乱やランダムな擾乱を与える。外部ひずみ流の強さ、渦度分布による違い、粘性の効果を調べるため、パラメタの値を変更して複数の場合の数値シミュレーションを実行し、擾乱の成長過程を解析し理論解析と比較検証する。バイパス遷移が起こる条件を求め、渦の非モード不安定性の役割と非線形段階に至る過程を解明していく。 (2)航空機の後流渦の不安定化過程の解明:安定性解析により得られる不安定擾乱や実際の航空機において生じる擾乱を与え、数値シミュレーションを実行し、擾乱の成長過程を解析する。現実の航空機に近い設定下で後流渦の不安定化過程のシナリオを明らかにし、理論解析の検証を行っていく。 ③非モード不安定性の一般論の展開と流れの安定性の統合理論の構築:流れの安定性の解析手法として一般化安定性解析を発展させるため、モデル渦に関する結果を基に一般化安定性解析の数理的手法を開発する。短波長極限における収束性を示し、一般化安定性解析とWKB安定性解析の相補的な関係を帰納的に導き一般化する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
|
Research Products
(15 results)