2013 Fiscal Year Research-status Report
渦の非モード不安定性とバイパス遷移の数理:流れの安定性の統合理論の構築に向けて
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24540391
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
服部 裕司 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70261469)
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Keywords | 渦 / 非モード安定性 / バイパス遷移 / 遷移的成長 / WKB安定性解析 / 流れの安定性理論 |
Research Abstract |
1. モデル渦の非モード不安定性の理論解析:一般的な渦の非モード不安定性のメカニズムを解明し、応用上重要な航空機の後流渦における非モード不安定性の役割を明らかにするため、航空機の後流渦モデルの安定性解析を行った。まず軸流がない渦モデルを対象とし、非モード不安定性とモード不安定性の比較を行った。2次元Taylor-Green渦の場合と同様に短時間では非モード不安定性による成長が相対的に重要であることを示した。 2. 直接数値シミュレーションによる検証:H24年度に準備したプログラムを用いて、直接数値シミュレーションによる検証を行った。2次元Taylor-Green渦を対象とし、初期擾乱として安定性解析により得られる不安定擾乱やランダムな擾乱を与え、不安定化過程を詳細に調べた。楕円流の場合に見られた弱非線形性による成長の飽和がないこと、乱流段階でエネルギースペクトルの慣性領域の幅が狭いことがわかった。また、平均渦度分布に偏りが発生し、中心部に渦度が集中することを示した。 また、航空機の後流渦の不安定化過程の解明のため、翼端渦形成過程の直接数値シミュレーションを行った。渦度分布と軸流分布のReynolds数依存性、さらには翼平面形状に対する依存性を明らかにした。理論モデルとの比較を行い、軸流に関してはモデルの改善が必要であることがわかった。 3. 非モード不安定性の一般論の展開と流れの安定性の統合理論の構築:流れの安定性の解析手法として一般化安定性解析を発展させるため、波のエネルギーに基づく安定性理論を展開した。軸流をもつらせん渦の場合に実際に安定性解析を行い、軸流の効果により孤立モードがかかわる不安定モードに特徴的な振る舞いが見られること、さらにこれが不安定成長率を強く左右することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、渦の安定性における非モード不安定性のメカニズムとバイパス遷移の役割を解明すると同時に、流れの安定性の統合理論を構築することである。発展的モデル渦の非モード不安定性の理論解析においては、航空機の後流渦モデルの安定性解析を行い、軸流がない渦モデルを対象とし、2次元Taylor-Green渦の場合と同様に短時間では非モード不安定性による成長が相対的に重要であることを示すことができた。軸流がある場合はH26年度の課題である。直接数値シミュレーションによる検証においては、2次元Taylor-Green渦を対象として直接数値シミュレーションによる検証を行い、初期擾乱として安定性解析により得られる不安定擾乱やランダムな擾乱を与え、不安定化過程を詳細に調べた。平均渦度分布に偏りが発生し、中心部に渦度が集中するなどの楕円流の場合との違いを明らかにすることにより、一般論の展開への足掛かりを得ることができた。さらに、航空機の後流渦の不安定化過程の解明のためには翼端渦構造を明らかにすることが必要であるが、翼端渦形成過程の直接数値シミュレーションにより、渦度分布と軸流分布のReynolds数依存性、さらには翼平面形状に対する依存性を示すことができ、理論モデルとの比較により、軸流に関してはモデルの改善が必要であることがわかった。モデルの改善を行い、モデルを対象として不安定化過程を解明することがH26年度の課題である。非モード不安定性の一般論の展開と流れの安定性の統合理論の構築においては、流れの安定性の解析手法として一般化安定性解析を発展させるため、波のエネルギーに基づく安定性理論を展開し、軸流をもつらせん渦の場合に軸流の効果を具体的に示すことができた。これは一般論への足掛かりとなる結果である。 総じて本年度の達成度は良好と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 発展的モデル渦の非モード不安定性の理論解析:一般的な渦の非モード不安定性のメカニズムを解明し、応用上重要な航空機の後流渦における非モード不安定性の役割を明らかにするため、航空機の後流渦モデルの安定性解析を進める。航空機の後流渦には一般に軸流が存在するため、軸流を入れたモデルを解析対象とする。直接数値シミュレーションで得られた翼端渦の渦度分布、軸流分布をモデル化し、非モード不安定性の理論解析を行う。 2. 直接数値シミュレーションによる検証:(1)モデル渦の非モード不安定性の検証と非線形段階に至る過程の解明:モデル渦として2次元Taylor-Green渦を対象とし、バイパス遷移が起こる条件を求め、渦の非モード不安定性の役割と非線形段階に至る過程を解明する。(2)航空機の後流渦の不安定化過程の解明:直接数値シミュレーションにより得られた翼端渦の渦度分布、軸流分布をモデル化し、不安定成長過程の直接数値シミュレーションを行う。安定性解析により得られる不安定擾乱や実際の航空機において生じる擾乱を与え、擾乱の非線形成長過程を解析する。現実の航空機に近い設定下で後流渦の不安定化過程のシナリオを明らかにし、理論解析の検証を行う。 3. 非モード不安定性の一般論の展開と流れの安定性の統合理論の構築:流れの安定性の解析手法として一般化安定性解析を発展させるため、一般化安定性解析の数理的手法を開発する。波のエネルギーに基づく安定性理論を発展させ、対称性、特に非粘性の場合のHamilton系としての対称性が非モード不安定性に課す性質を導く。また、擬スペクトルの数値解析を行うことにより、無限次元力学系の特徴である連続スペクトルと遷移的成長の関係を明らかにする。最後に研究を総括し、一般化安定性解析、WKB安定性解析およびモード安定性解析を軸とした流れの安定性の統合理論を構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 次年度使用額は、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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