2012 Fiscal Year Research-status Report
厳密解および場の理論を用いた臨界的2次元確率過程の研究
Project/Area Number |
24540393
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堺 和光 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10397028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 康平 岡山光量子科学研究所, その他部局等, 研究員 (30583033)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 確率的レーブナー方程式 / SLE / 確率過程 / 共形場理論 / 可積分系 / 厳密解 / ベーテ仮説 / 非平衡系 |
Research Abstract |
フラクタル構造は,臨界現象において幅広く期待される普遍的な幾何学的構造である.最近,2次元では確率的レーブナー発展(SLE)と呼ばれる発展方程式によって,これらのフラクタル構造が直接的かつ数学的に厳密に記述することができるようになってきた.我々は,このSLEに対して,「スピン」に相当する内部対称性を付随させることに成功し,対応する共形場理論(WZW模型)との対応を定式化した.とくに,複数のSLE曲線の配置に関するトポロジーと統計力学における分配関数の関係を論じ,それらが一対一対応の関係にあることを見抜いた.さらに,これらの相関関数が満たす偏微分方程式を厳密に解くことにより,この系のクラスターの交叉確率(クラスターがある境界からある境界へ浸透する確率)を初めて厳密に導出た.WZW模型は,6頂点模型(氷の模型,誘電体の模型)などのよく知られた統計力学模型の臨界現象を幅広く含む模型であり,我々の定式化は,これらの模型の臨界現象の幾何学的研究の基礎を与えるものと考える. また,完全非対称単純排他過程(TASEP)とよばれる1次元非平衡系模型の研究を行った.非対称単純排他過程は,交通流の渋滞,粒子流の停滞などの渋滞の模型,さらにはRNA上の酵素による蛋白の合成に関して幅広く応用される模型のひとつである.我々はベーテ仮説を用いて,TASEPの緩和ダイナミクスの厳密解を求めることに成功した.とくに、これまで未解明であった局所密度の振幅のスケーリング指数は-3/2,対して,カレントのそれは-1となることを初めて明らかにした. この他,Razumov-Stroganov予想など研究の基礎となる可積分系自体の基礎的研究を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した計画に従い,内部対称性を有する多重SLEの定式化に成功した.臨界現象がWZW模型によって記述される系の交叉確率の厳密計算に成功した.これらによって,ほぼ計画通り順調に研究が進展している考える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の主目的は、SLEとCFTをつなぐ数理構造を解明し、さらに可解模型を利用して,これまで解析が困難であった2次元臨界現象の幾何構造の厳密な解析およびそれらの具体的物理系への応用を目指すものであり,次年度以降も研究計画に従い,研究を発展・推進させる予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の研究費は,主として研究遂行上必要な研究代表者との議論のための旅費にあてられたが,その滞在費・交通費の残額として当該研究費が発生した.次年度も,研究代表者との議論のための旅費に使用する予定である.
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