2013 Fiscal Year Research-status Report
厳密解および場の理論を用いた臨界的2次元確率過程の研究
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24540393
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堺 和光 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10397028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 康平 岡山光量子科学研究所, その他部局等, 研究員 (30583033)
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Keywords | Schramm-Loewner発展 / SLE / 可積分系 / K理論 / グロタンディーク多項式 / 非平衡系 / 可解模型 / 厳密解 |
Research Abstract |
可解な確率過程模型の背後に潜む数学構造を調べているなか,あるクラスの量子可積分系とK理論との対応を発見した. シューア多項式に代表される対称多項式は,表現論など数学の研究対象のみならず,ソリトン理論,共形場理論,確率過程等々,数理物理に頻繁に登場する.グロタンディーク多項式は,シューア多項式を一変数一般化した対称多項式であり,元々は代数多様体におけるK理論と呼ばれる枠組みの中で導入されたものである.すなわち旗多様体のグロタンディーク環におけるシューベルト類の多項式表示として導入される. 我々は,このグロタンディーク多項式と,可解模型の関係性について議論した.即ち,5頂点模型の波動関数をひとつの行列式によって表現することに成功し,この行列式表示が,グロタンディーク多項式と一致することを発見した.さらに波動関数の完全性関係式などを用いることによって,グロタンディーク多項式の満たすコーシー恒等式等,直交関係式の明示式や表現論的に重要な幾つもの明示式を,その物理的解釈のもと厳密に導出した.また,我々は,この研究を非エルミートphase模型の場合に拡張した.すなわち,この模型の波動関数も同じくグロタンディーク多項式で表わされることを示し,K理論的なボソン・フェルミオンの対応を発見した. また,これらの理論の全く異なる方面への応用として,ある種の3次元溶解結晶模型を構築し,その分配関数を厳密に計算した.3次元溶解結晶模型は,3次元のヤング図とみなすことができ,この3次元ヤング図は自然数の平面分割の3次元で表したものとみなすことができる.我々は,グロタンディーク多項式に成立するコーシー恒等式を用いることによって,この3次元溶解結晶模型の分配関数を厳密に計算することに成功した.この分配関数はMacMahon関数と呼ばれる,自然数の平面分割の生成母関数を与える関数の一般化となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の研究計画にはなかった新たな進展があった.すなわち,当初の研究計画では,可解な確率過程模型の研究を行うことがひとつにあったが,この研究の中で「可解模型とK理論との対応」という予期せぬ発見があった.また,他の計画についても,おおむね予定通りに進んでいるといえる.以上の理由より,研究計画はおおむね順調に進展しているとかんがえる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は,厳密解や場の理論を用いた確率過程の研究であるが,本年度はこの研究の過程で「可解模型とK理論との対応」という新たな進展があった.今後は,この進展と,厳密解や場の理論との関連についてより深く探求する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者・分担者とも主として物品費および旅費の端数として次年度使用額が生じた. 代表者・分担者の次年度の物品費および滞在費として使用する計画である.
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