2012 Fiscal Year Research-status Report
可積分量子多体系の非平衡ダイナミクスと相関関数:再帰性と量子エルゴ―ド定理の検証
Project/Area Number |
24540396
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
出口 哲生 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (70227544)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 物性基礎論 / 統計力学 / 数理物理 / 可積分量子系 / 非平衡ダイナミクス / 再帰性 / エルゴ―ド性 |
Research Abstract |
(1)δ関数型相互作用ボース気体の孤立局在波解の特徴づけ: 斥力のデルタ関数型相互作用をもつ1次元ボース気体において、ホール励起を重ね合わせると、密度プロファイルは空間的に一様でなく、密度の値が急激に減少する局在領域をもつ量子状態が導かれることが、本研究の前段階の共同研究の中で明らかにされた。その密度プロファイルはあたかもダークソリトン解の振幅のような形状であった。この発見を定式化し、一般化を試みた。1次元ボース気体の弱結合領域では、量子状態は古典的に振る舞い、その様子はGross-Pitaevskii方程式(非線形シュレーヂィンガ―方程式)で記述されると予想される。 形状因子公式を用いて上記の局在量子状態の密度プロファイルを求めたところ、1ソリトン解の振幅のプロファイルとほぼ完全に一致した。ただし、ソリトン解は周期的境界条件のため楕円関数解である。また、ホール解を重ね合わせて導かれるN粒子の量子状態とN-1粒子の量子状態の二つを考え、その間の場の演算子の行列要素を計算すると、振幅と位相が両方とも、1ソリトン解のものと非常に良く一致することが見出された。これらの結果は論文として投稿されている(arXiv:1204.3960)。 (2)再帰時間の数値評価と解析的評価: 可積分量子多体系の再帰時間の数値的評価を試みた。 1次元δ関数型相互作用ボース粒子系において、そのベーテ仮設方程式の数値解を求め、励起エネルギー固有値を数値的に求め、そして、振動数を調べることにより再帰時間を評価した。この値を量子系の時間発展の結果と比較し、再帰時間の推測値の妥当性を判定する。実は古典力学系ではM. Kac(1943) により、速度の時間相関関数を用いて再帰時間が解析的に評価されている。また、古典力学におけるポアンカレの再帰定理の量子化に相当する、量子再帰定理とも比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の研究実施計画に挙げられた3項目の中で、二つまではほぼ達成されたため、順調に進展していると考えられる。すなわち、以下の3項目の中で、(1)と(2)はほぼ達成された。 (1)δ関数型相互作用ボース気体の孤立局在波解の特徴づけ: (2)再帰時間の数値評価と解析的評価 (3)量子XXZスピン鎖のダイナミクスのシミュレーション(可積分と非可積分)
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Strategy for Future Research Activity |
今後は残された課題、 (3)量子XXZスピン鎖のダイナミクスのシミュレーション(可積分と非可積分) に取り組むこと、さらには、 平成25年度および26年度に挙げられた研究課題に取り組むこと、 特に量子エルゴ―ド定理の検証の研究に取り掛かることが、基本的な推進方策である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用分は、海外の研究者との研究連絡の費用に充てる方針である。 例えば、ニュ―ヨーク州立大学ストーニー・ブルックのV.E. Korepin などである。
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