2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鈴木 淳史 静岡大学, 理学部, 教授 (40222062)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 ドイツ |
Research Abstract |
本研究は、無限および有限一次元空間上でのボーズ粒子系の量子相関に対して、量子逆散乱法と完全WKB法を組み合わせた新たな定量的解析方法を確立する事を目標とする。 量子ボーズ系自体は連続空間で定義されており、一次元とはいえ同一点での作用積の解釈など難しい問題を含んでいる。そこで今年度は、より取り扱いやすい可積分な量子スピン模型を取り扱うことにより、ボーズ系を取り扱う理論的基礎を構築する事を試みた。二つの問題は一見、関連の無い様にみえるが、量子スピン系でスピンの大きさを無限大の極限をとり, 交換相互作用と異方性を微調整する事により一般化されたボーズ模型が得られることが知られている。最も簡単なスピン1/2の量子スピン系に関して、ゼロ温度において還元量子KZ方程式を用いた量子相関の定量的評価方法がすでに神保らにより指摘されていた。そこでは隠されたフェルミオン的な構造が重要な役割を果たしている。 報告者と共同研究者によりこの構造が自然に有限温度に持ち上がり、フェルミオン的な性質に起因するベキ零性により高精度な定量的計算が可能であることが指摘されていた。高いスピンを持つ系の場合、対応する還元量子KZ方程式の存在は明らかでない。そこでinhomogeneityとよばれるパラメータをうまく採る事に依り、離散的な点でのみ成立する関数等式を導き、近接格子点の相関関数はこの情報のみで決定できることを示す事を2セグメントの場合に成功した。さらにfusionとよばれる構成法と組み合わせる事により次近接格子点までのすべての量子相関を任意の温度で精密に定量評価することができた。とくに零温度の極限でその相関関数も偶数の引数をもつリーマンゼータ関数により表せるという非自明な結果を得た。この結果は論文にまとめられ現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度中には高いスピンをもつ有限系での量子相関に対する定量的方法、および連続系である拡張されたボーズ系のための数値的評価方法を確立し、平成25年度にはそれらを有向ポリマーや非対称排除過程などに応用する予定であったが、具体的に高いスピンの相関関数を定量評価するのみに予想以上に時間がかかってしまった。当初は離散的な点でのみ成立する関数等式だけで高いスピンの相関関数が決定できると期待していた。原理的にはこれは正しいのであるが、その枠組みでは比較的大きなしかも要素が関数である行列の逆をとる必要が生じた。残念ながら現在の商用数式処理プログラムでは、この作業を行う事ができず断念し、より基礎的なアプローチを採用せざるをえなかった。そのため、例えばスピン1の相関関数を構成するには倍のセグメントの長さでのスピン1/2の全ての密度行列要素を評価することが必要になってしまい、200近くあるこれらを全て決定するのにほぼ一年費やす事となってしまった。 しかしながら最も困難な部分はこれにより解消されたので、今後予定の課題の達成まで速度をあげることが可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず量子スピン系で得られた結果についてその応用を行う。とくにスピンの大きさが互い違いであるような系の量子相関について定量的に調べる予定である。絶対零度でスピン1/2の系において量子相関が奇数の引数を持つリーマンゼータ関数により表せることが10年近く前に指摘されていた。本研究によりこの知見が拡張され、半整数の量子スピン系では奇数の引数、整数の量子スピン系では偶数の引数をもつリーマンゼータ関数により量子相関が表せることが予想される。そこでmixed spin系において、このいずれが実現されているかを検証することを予定している。 つぎに有限系における量子スピン相関を計算する数値的アルゴリズムを開発することを予定している。これを利用する事により、有限系での有向ポリマーの自由エネルギー揺らぎに対してベーテ根を数値的に取り扱う事により定量的な解析を行なう事を平成25年度の目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は統計力学の国際会議が韓国で開催予定であり、それに先立って7月に梨花女子大学で行なわれる可積分系の会議において招待講演を行う予定である。また韓国の会議の後、京都大学において行なわれるサテライトの会議にも参加予定である。8月には台北のNCTSでおこなわれるsummer schoolの講師として大学院生向きに講義をおこなう。また9月にはフランスにおいて量子相関の専門家による会議が開催予定であり、そこでも招待講演予定である。招待とはいえ、多くは滞在費しか先方負担でないためこれらの旅費に助成金を使用する予定である。また、講演に使用、および出張先での作業に使用するノート型PCが古くなったのでできれば新しいものに置き換えたいと考えている。
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