2013 Fiscal Year Research-status Report
数学的に予言される2次元点渦系平均場方程式のm点爆発解の動力学的理解
Project/Area Number |
24540400
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
八柳 祐一 静岡大学, 教育学部, 准教授 (30287990)
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Keywords | Onsager理論 / 2次元点渦系 / 絶対負温度 / 2次元乱流 / インバースカスケード / Fokker-Planck型衝突項 |
Research Abstract |
Nagasaki-Suzukuらによって数学的に予言されている,円形境界を有する2次元非粘性Euler方程式において,逆温度β=-8πm(mは自然数)でm点爆発する平衡解を,物理学的,動力学的に解釈するのが,本研究の最終目標である。モデルとして点渦系を用い,その離散性に由来する衝突項に焦点をあて,どのように平衡解へ緩和するのかを,今年度は重点的に解析してきた。我々が明らかにしたことは以下のとおりである。 Chavanisらによると,点渦系においても銀河と類似したviolent→slow relaxationという2段階の緩和をすることが予言されている。この予言について数値的に検討した結果, まず,violent relaxationにより,渦度ωが流れ函数ψの函数ω=ω(ψ)として表しうる準安定的な状態に緩和し,div (\vec{u} ω)=0が実現することが確認できた。昨年度の段階で,我々はこれが完全な熱平衡解である,との結論に達していたが,現在は,この分布は準安定な分布に過ぎず,この後,slow relaxationにより,Boltzmann型の完全な熱平衡解に達するのだろう,という結論に至っている。この状態において,流れ函数の等高線は渦度の等高線と平行となっており,完全な非粘性流体であれば流れ函数を横切る流れは存在しないため,div (\vec{u} ω)=0が実現された段階で,これ以上緩和が進むことはなくなる。しかし,点渦系では,運動論的に導かれた衝突項があるため,流れ函数の等高線を横切る粒子輸送が予想され,実際に数値的にこの粒子輸送を確認することに成功した。この項の大きさは1/N程度と予想されるため,Euler方程式の左辺第2項に比べれば小さい。すなわち,効果が小さな衝突項により駆動される粒子輸送が,点渦系でのslow relaxationであることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度初等から,点渦系の緩和について多くの業績があるP.H.Chavanisとの議論を行った結果,これまでに明らかにされてきたことと我々が今回明らかにしたことの違い,および類似点が明らかになった。まだ,明確な成果は得られていないが,今後の研究の進展に示唆を与える議論であったと考えている。彼との共同作業による成果は,現在,論文に取りまとめている最中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平衡解に緩和する過程が明らかになりつつあり,2段階緩和という当初,予想していなかった事項が新たに明らかになった。これは,研究計画に記載されている「非中性プラズマ実験により得られたm点結晶解とm点爆発解の関係」を明らかにするための緩和過程を理解する鍵となると考えている。 また,今年度は残された「Campbellらの結果が数学的に予言されるm点爆発解になっているか否かの検討」を主に数値的に進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
投稿論文の出版費用として残しておいた分について,査読者との議論が長引いたため,当該年度中での出版が見込めなくなった。 当該論文の出版費用に充当
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Research Products
(5 results)