2013 Fiscal Year Research-status Report
プラズモン観測による膨張金属流体中の電子ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
24540401
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 和博 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50362447)
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Keywords | 液体金属 / 非弾性散乱 / 電子状態 |
Research Abstract |
本研究課題は、金属流体、特にアルカリ金属流体を対象として、高温条件における非弾性X線散乱測定を行い、その電子状態を明らかにすることを目的としている。具体的に電子集団運動であるプラズマ振動に着目し、非弾性X線散乱を用いて振動エネルギーとその減衰、さらにはそれらの分散関係を測定することにより、課題の解決を目指す。反応性が高く実験上の取り扱いの困難なアルカリ金属を、高温で安定に保持する専用の試料保持容器(セル)の開発は、本課題において必須である。今年度は、前年度に開発した専用セル内部の狭小試料空間に、高い信頼性で試料導入をする技術開発を進めた。現有のヘリウム循環型グローブボックス内で大気に曝すことなく、低融点のセシウムから比較的融点の高いナトリウムまでの導入技術を確立した。さらに平行して、融点付近の比較的低温度領域における金属流体のプラズモン挙動に関する非弾性散乱実験およびデータ解析も進めている。今年度は、これまで取得した融点直上の液体ルビジウムの非弾性X線スペクトルの詳細なデータ解析を進め、これまでに観測した「液体状態と結晶固体状態におけるプラズモン分散関係の差異」の起源について考察を行った。また、プラズモン線幅にも差異が生じ、液体状態では結晶固体に比較して線幅が狭小化することを精密解析により見出した。この結果は原子系の集団運動の挙動から予想される傾向とは逆であり、学術的に興味深い結果である。融点直上の液体状態における電子状態に関する知見は、今後、高温条件における実験を行うに際して基準となるという意味からも、有意義な知見が得られたものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が主な研究対象とするアルカリ金属流体の実験環境技術の実現に向け今年度も引き続き継続を実施した。高信頼なセル開発および試料導入技術を構築し、今後の高温条件下における非弾性X線散乱測定に向けた準備を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
大型放射光施設において、膨張金属流体、特にアルカリ金属元素であるルビジウムの低密度化流体状態を実現し、その非弾性X線散乱測定を行う。また、他のアルカリ金属元素であるセシウム等への非弾性X線散乱測定も行う。プラズモン励起エネルギーや線幅の分散に関する知見を通じて元素ごとの共通性や特異性を把握し、物性物理における基本モデルである電子ガス理論との比較や差異について考察を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度予定の非弾性X線散乱測定実験で用いる消耗品等に、当初予定よりも経費を充当する必要性が生じたため。 大型放射光施設における非弾性X線散乱測定を行うため、SPring-8への出張を予定しており、その際に必要となる消耗品費や旅費等に利用することを予定している。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Electron momentum density in liquid silicon2013
Author(s)
K. Matsuda, T. Nagao, Y. Kajihara, M. Inui, K. Tamura, J. Nakamura, K. Kimura, M. Yao, M. Itou, Y. Sakurai, N. Hiraoka
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 88
Pages: 115125(1-7)
DOI
Peer Reviewed
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