2013 Fiscal Year Research-status Report
エンタングルメントを用いた強相関トポロジカル量子相の研究
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24540402
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸塚 圭介 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (80291079)
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Keywords | トポロジカル相 / 冷却原子系 / エンタングルメント / ストリングオーダーパラメータ |
Research Abstract |
平成24年度の研究において、フランスの共同研究者と見いだした1次元冷却原子系のトポロジカル相の性質の研究を続行した。まず、冷却原子(フェルミオン)の相互作用が非常に大きい強相関の極限における有効ハミルトニアンを導出し、冷却原子の交換相互作用の符号が鍵であり、その符号によって異なるトポロジカル相が出現すること、また核スピン多重項の数Nによってその性質が全く異なることを明らかにした。これは、異なるトポロジカル相を冷却原子で実現する際に重要である。最近、群コホモロジーの方法によって、相互作用のある系におけるトポロジカル相のクラスを分類することがある程度可能になってきている。そこで、次に我々は、冷却原子系のトポロジカル相の性質を調べ、いかなるトポロジカルクラスに属するかを同定するために、エンタングルメントスペクトラムを調べた。エンタングルメントスペクトラムは波動関数の性質だけを用いて計算されるものであり、波動関数の非局所的性質と密接に結びついているトポロジカル相の性質を調べる上で大変有効であることが明らかになりつつある。我々はinfinite-time-evolving block decimation(iTEBD)法を用いて無限系に対してこれを計算し、トポロジカルクラスを決定することに成功した。トポロジカル相は通常、局所的秩序パラメータによって特徴づけることができないとされているが、もし、比較的簡単な構造を持つ非局所的秩序パラメータで特徴づける(検出する)ことができれば、理論的にも、実験的にも大変魅力的である。我々は、従来知られてきたstring order parameterと呼ばれるものを拡張することでそれが可能であり、また、それらの秩序パラメータがエンタングルメントスペクトラムと密接に関係していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に挙げた研究課題のうち、一次元系のトポロジカル相の研究については、フランスのグループ、および、研究代表者の所属する基礎物理学研究所の学生である谷本氏との共同研究により、その相構造、トポロジカルな性質に関する理解が非常に深まってきており、まもなくその成果をまとめた論文2篇を投稿予定である。昨年度に発表した論文と併せて、このプロジェクトについては、ほぼ完成に近いと言える。2次元の磁場中スピン液体の研究については、堀田知佐氏、ハンガリーのPenc氏と共同研究を開始し、ある程度の結果が得られているが、まだ現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究の最終段階に入りつつある一次元冷却原子系のトポロジカル相のプロジェクトを完成させ、結果を公表する。また、2次元系における磁場中スピン液体のプロジェクトであるが、最近、2次元におけるテンソル積波動関数の知見を生かしたアプローチへの着想を得たので、その方向で新展開を目指す。さらに、トポロジカル相における、乱れの効果の研究をスタートさせる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請後に決定した、平成25年度後半の大学院講義および、指導中の修士課程2年の学生の指導などのために予定していた外国出張ができなくなり、その旅費として想定していた金額が使用できなくなったため。 外国出張旅費の一部として使用予定。
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