2013 Fiscal Year Research-status Report
統計力学と流体力学のコラボレーションによる塑性流動と乱流の新理論の展開
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24540404
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
大信田 丈志 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50294343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中原 明生 日本大学, 理工学部, 准教授 (60297778)
後藤 晋 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40321616)
松本 剛 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20346076)
大槻 道夫 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 講師 (30456751)
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Keywords | 塑性流動 / 乱流 / ラベル変数 / モード結合理論 / 揺動応答関係 / 一列縦隊拡散 / シェルモデル / 非平衡統計力学 |
Research Abstract |
練り歯磨き粉など(ペーストあるいは濃密スラリー)が示す塑性流動を微視的な基礎に基づいて理解すること、およびその基礎となる非平衡統計力学の枠組みそのものの進展を目指し、今年度は4回のコラボセミナー(通算第24回-27回)と学会等での打ち合わせを通じて検討を行った。特に26回目のセミナーは研究会として実施した。 本年度の最大の成果は、前年度までに我々が1次元のコロイド系で開発してきた方法を、2次元に拡張するのに成功したことである。我々の手法に対しては、それは1次元限定の理論ではないか、という批判があった。 1次元系では粒子の並んだ順に番号を振ることができるので理論が簡単になるが、2次元の非結晶でその手が使えないのは致命的なのでは?という批判である。 我々は、番号付けに頼らずにLagrange相関を定義できる枠組みをまず構築し、その枠組みを用いて、コロイド粒子の相互作用に対する方程式を具体的に書き下した。 さらに従属変数の取り方を工夫し、変形勾配テンソルの相関関数と応答関数に対する方程式系を導出した。 他方では、応答関数と相関関数の関係について一般的知見を得るため、流体乱流へのHarada-Sasa関係式の適用を問う研究を進めた。 前年度までに得られていたシェルモデルでの計算を拡張して、非圧縮Navier-Stokes乱流に対する関係式を具体的に書き下し、さらに数値計算での検証を開始したところであり、一定の制約の範囲内ではあるが良好な一致を示唆する結果が得られつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的を達成するための最も重要なステップのひとつが「ラベル変数理論の2次元化」であり、これが達成できたという意味では、研究の進捗状況はほぼ順調であるとも言える。 しかし、できればその次のステップとして、2次元のLagrange的MCT方程式の解を得るところまで年度内に進めておきたかったのだが、そこまでは達成できず、新年度への持ち越しとなっている。 進展がやや遅れた主な理由は、1次元系の結果をまとめた論文を発表する際、特に一列縦隊拡散(SFD)に関する過去の多数の研究との比較が必要になり、文献調査に多くの時間を要したためである。ただしそのおかげで研究の新規性がより明確になったので、必ずしも余計な寄り道とは言い切れない。 もうひとつの理由として、急な入院や育児関連等の特殊な事情がたまたま続き、会合のための日程調整が難航したことが挙げられる。 結果的に、メンバー全員での会合(コラボセミナー)の今年度の開催回数は、例年よりも少ない4回にとどまった。 この困難は今年限りのものと考えられ、またSkypeの活用などの補助手段を整備する良い機会となったので、次年度には影響はないものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた2次元のLagrange的MCT方程式に対し、その近似的解析解または数値解を求められるようにする。 この点は旧年度から持ち越した課題であり、早急な実行が必要である。実際のところ、予備的な解析は既に旧年度中に開始している。さらに、MCTなどのガラス系の理論について造詣の深い研究者を講師に招いてセミナーを開催する計画が進行中であり、その力を借りて技術的難点を突破することで、年度前半には具体的な結果が得られるものと期待できる。 さらに2次元Brown粒子系の直接数値計算を行い(これも旧年度中に準備が進んでいる)、理論の予言を検証できるようにする。 続いて、剪断を含めた濃密コロイド系の理論に進む必要がある。 この時点で非平衡系の統計理論となるため、今まで進めてきた乱流理論の知見が生きてくる。 逆にコロイド系などでの知見をNavier-Stokes乱流に生かせる可能性もある。 いずれにしても、非平衡系一般を視野に入れつつ研究を進めていく。 さらに、ペーストの記憶効果の実験およびレオロジー測定に関して、引き続き、関連するプロジェクトとの情報交換を推進する。 以上の研究内容の統合と議論のため、5回程度のセミナーを実施する。特にそのなかのひとつは、前年度と同様に、10月から12月にかけての適当な時期に研究会の形で開催する。 セミナーの日程調整がうまくいかない場合は、Skype等の補助手段を活用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に海外での成果発表に用いるための携帯用パソコンを旧年度に購入したが、それに付随して注文したスリーブの納品が遅れたため、スリーブの分だけの費用(9800円)を繰り越し、新年度の会計で処理することとした。 繰越額は、上記のとおりスリーブの代金にあてる。これは成果発表などの際に携帯用パソコンを安全に持ち運ぶためのものである。 上記繰越額以外の本来の請求分については当初の計画どおりである。すなわち、最終年度であるので、今までの研究成果を海外で発表することを計画し、そのための費用を計上している。 その他の主な費用はセミナー旅費であり、また成果発表に伴って論文別刷りの配布が必要となることも想定している。
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Research Products
(9 results)