2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540405
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石坂 智 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10443631)
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Keywords | 量子状態複製 / 量子情報分割 / 量子状態スワップ |
Research Abstract |
昨年度は、量子状態の無相関複製における最適忠実度を求めることにより、量子情報の分割可能性についての研究を行い、従来の指摘に反し、確率的には分割が可能であることを示すことに成功した。本年度は、この結果を一般次元の場合に拡張し、これらの結果を論文にまとめ投稿し受理された。 また本年度は、遠く離れた2者であるAとBが予め共有している量子状態を、局所操作と古典通信(LOCC)でAとBの役割が入れ替わった状態にする(状態をスワップする)という量子情報処理について研究を行った。純粋状態はAとBの入れ替えに関して対称なので、AとBが予め共有している状態が純粋状態であれば、LOCCで常にスワップが可能である。このように、LOCCによる状態スワップは量子相関の対称性と密接に絡んでおり、量子相関の基本的性質を探る上で重要な問題である。ところが混合状態の場合については、AとBの局所密度行列の固有値が等しくなければスワップできないという定性的な事柄が分かっているのみであり、スワップ可能性の定量的な事柄は何も分かっていない状況である。そこで、ランダムに発生させた2量子ビット状態に対して、LOCCに近い操作であるPPT操作におけるスワップ成功確率を数値的に計算し、量子状態の入れ替え困難度の定量的評価を行った。その結果、すべての2量子ビットの状態は有限確率で入れ替えが可能である事、この確率はエンタングルメント量と共に減少する事を明らかにした。また、この下限を与える特殊な混合状態(すなわち、LOCCで入れ替えが最も困難な状態)を見出す事にも成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多者間の非古典相関の性質を調べることが研究目的である。方法論が計画とは異なってしまたっが、量子状態スワップという従来あまり考えられていなかった量子情報処理に着目することで、量子相関の入れ替え困難性の解明を定量的に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
量子相関の強さの上限としては Tsirelsonの上限が良く知られている。一方、この上限は、単純な超光速通信不可能性からは説明することができない。実際、超光速通信は不可能であるもののTsirelson上限よりは強い量子相関が存在する。近年、超光速通信不可能性を情報理論的に取り扱った研究が精力的に行われており、そのような理論である情報因果律や局所直交性によって量子相関の上限境界の一部が説明可能であることが示されている。しかしながら、量子相関の境界の全ての説明には成功しておらず、量子相関の根本的な理解の為には、情報因果律や局所直交性などをより精緻にした理論の構築が必要である。そこで、本年度は、quantum steerabilityなどを情報因果律に取り込んだの理論の構築を目指す。また、昨年度示すことに成功した量子情報の分割可能性との関連も明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会での成果発表が次年度にずれ込んだため。 国際学会への参加費、旅費として使用する計画である。
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Research Products
(1 results)