2012 Fiscal Year Research-status Report
リウビル演算子の複素固有値問題からみた低次元量子系における輸送現象の理論
Project/Area Number |
24540411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10264821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非平衡統計力学 / 緩和過程 / 拡散過程 / リウビル演算子 / 散逸 / 国際研究者交流(米国) |
Research Abstract |
先行研究で、ダヴィドフ・モデルに基づいて、分子鎖における音響フォノン・モードと結合した振動励起子に対するリウビル演算子の複素スペクトルが、励起子のエネルギー・バンド幅に対するフォノンのバンド幅の比により決まる無次元パラメータが有理数であるか無理数であるかによって全く異なった様相を示し、そのことからホフスタッターの蝶に類似したフラクタルを含む構造が現れることを発見していた。今回の研究ではさらに、励起子とフォノンの結合の仕方によってスペクトルが全く異なったものになり、この違いは、緩和過程における指数減衰とベキ減衰という違いにつながることを明らかにした。指数減衰を示す系においては流体力学領域が存在し、そこでは流体力学的量子音波と量子拡散の現象が起こることを見いだし、特にフォノン系の熱雑音により波束の運動が安定化されるという反直感的な帰結を導いた。 一様に分布した重い粒子の集団から散乱される軽い試験粒子の量子力学的運動を考える1次元量子ローレンツ気体の問題では、質量比比が零の極限(完全ローレンツ気体)で弱結合の場合に、任意の波数の空間変調がある空間における衝突演算子の固有値問題を厳密に解いた結果を用い、非流体力学的な状況において、自由粒子的に伝搬するモードが存在し、モードの重ね合わせによりうなりが起こることなど特異な現象が現れることを明らかした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画に記したように、リウビル演算子の複素スペクトルに現れる構造が現象にどのように反映されるかということを明らかにすることができた。ただし、長時間領域で現れる現象について論じることはできたが、スペクトルの全域が現象にどのような形で現れてくるかを明らかにすることはこれからの課題である。 1次元量子ローレンツ気体の問題においても、非流体力学的状況での非平衡輸送現象についての理解が進み、新奇な輸送現象が現れることも発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究で、ダヴィドフ・モデルに基づいて、分子鎖における音響フォノン・モードと結合した振動励起子に対するリウビル演算子の複素スペクトルが、励起子のエネルギー・バンド幅に対するフォノンのバンド幅の比により決まる無次元パラメータが有理数であるか無理数であるかによって全く異なった様相を示し、そのことからホフスタッターの蝶に類似したフラクタルを含む構造が現れることを発見していた。今回の研究ではさらに、励起子とフォノンの結合の仕方によってスペクトルが全く異なったものになり、この違いは、緩和過程における指数減衰とベキ減衰という違いにつながることを明らかにした。指数減衰を示す系においては流体力学領域が存在し、そこでは流体力学的量子音波と量子拡散の現象が起こることを見いだし、特にフォノン系の熱雑音により波束の運動が安定化されるという反直感的な帰結を導いた。 一様に分布した重い粒子の集団から散乱される軽い試験粒子の量子力学的運動を考える1次元量子ローレンツ気体の問題では、質量比比が零の極限(完全ローレンツ気体)で弱結合の場合に、任意の波数の空間変調がある空間における衝突演算子の固有値問題を厳密に解いた結果を用い、非流体力学的な状況において、自由粒子的に伝搬するモードが存在し、モードの重ね合わせによりうなりが起こることなど特異な現象が現れることを明らかした。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究打ち合わせのための海外出張において、研究協力者の厚意により研究研究協力者宅に宿泊したことなどのため経費を節約することができ、繰越金が生じた。次年度において、国際会議出席および研究打ち合わせのための旅費として使用する予定である。
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