2013 Fiscal Year Research-status Report
リウビル演算子の複素固有値問題からみた低次元量子系における輸送現象の理論
Project/Area Number |
24540411
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10264821)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80236588)
|
Keywords | 非平衡統計力学 / 緩和過程 / 拡散過程 / リウビル演算子 / 散逸 / 国際研究者交流(米国) |
Research Abstract |
これまでの研究で、1次元完全量子ローレンツ気体におけるリウビリアンの複素固有値問題に対する弱結合の場合の完全な解を得ていたが、その解を再検討した。その結果、ボルツマン方程式が有効な、空間的変調の長さのスケールが平均自由行程と同程度かそれより長いような領域において、「例外点」(exceptional point)と呼ばれるリウビリアンが対角化できずJordanブロックの構造をもつ点が存在することを見出した。空間的不均一性を表す波数を変化させたとき、例外点を境にしてリウビリアンの固有値は純虚数から実部をもつ複素数へと変わり、系の振る舞いは指数関数減衰から振動減衰へと移り変わる。例外点に近づくにつれて、固有ベクトルの規格化因子が発散的に大きくなるため取り扱いが困難になるが、我々はJordan標準系を用いた表示を拡張し、例外点で有限で連続な基底を用いた新しい解析的な取り扱い方法を開発した。そして、ローレンツ気体の時間発展を詳細に分析した結果、例外点を境にして、系の時間発展における振る舞いが質的に変化し、そのことから分布の動きに2つの異なる機構があることが分かった。 1次元ローレンツ気体に対するボルツマン方程式は電信方程式と等価であることを見出したほか、1次元ポーラロン系においてもローレンツ気体と同様の例外点を含むリウビリアンのスペクトル構造を発見し、電信方程式が例外点を含む系の時間発展を実効的に記述する方程式として普遍的であることが分かった。 他にも、非熱的輻射場結合した分子系においても、リウビリアンの例外点が現れ、指数関数減衰から振動減衰へと移り変わる振る舞いを発見し、例外点出現の機構を詳細に分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リウビリアンの例外点に注目することにより、1次元量子ローレンツ気体の理解が大幅に進んだ。非熱的輻射場結合した分子系においても、指数関数減衰から振動減衰への動的相転移という発見があった。ポーラロン系でも例外点を発見するという進展があった。一方、ポーラロン系におけるスペクトルの複雑性が現象にどのように反映されるか、ポーラロン系における外場や温度の効果という問題にたいしては、あまり進展しなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
質量比を有限として、軽い試験粒子が重い粒子の集団と相互作用しながら運動する系に試験粒子を駆動する外場が掛かった場合を考え、非平衡定常状態の記述とその理解を目指す。 1次元ポーラロン系でフラクタル構造が含まれているような複雑なりウビリアンのスペクトルが得られていたが、このことからどのような現象が起こるのかを、数値シミュレーションを大規模に行うことにより分析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大規模な数値シミュレーションをするところまで手が回らなかったため、計算機関連予算が残余となった。 計算機環境の整備のために使用する予定である。
|
Research Products
(27 results)