2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540413
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 統太 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50280871)
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Keywords | スピングラス / モンテカルロシミュレーション / 相転移 / スピンカイラリティ |
Research Abstract |
本年度は主にハイゼンベルグスピングラス模型の数値計算を行いました。ここでは、スピングラス・カイラルグラス相転移が同時に起こるか否か、についてまず明らかにする必要があります。その上で、転移温度より低温側での臨界線の有無について調べる、というのが当初の計画でした。この前半部分の同時相転移を強く主張する結果が得られました。また、そのために必要な二つの新しい解析手法を開発しました。 スピングラスの様なランダム系では数値データに複雑な有限サイズ効果が現れます。そこで、本研究ではまず、「複雑なサイズ効果をシンプルにする新たな測定法」を開発しました。「ウインドウ測定法」です。これは、シミュレートする系の内部の部分系(ウインドウ)でのみ物理量の測定を行う方法です。以前、白倉によって提案されていましたが、ウインドウサイズの複雑な依存性については解決されないままでした。これを、ウインドウ測定の物理量をウインドウ測定で求めた相関長でスケールすることにより解決しました。有限時間・有限サイズの様々なデータがすべて一つのスケーリング関数にのります。つまり、シンプルなサイズ依存に変える事ができました。サイズ依存の複雑性からこれまで使えなかった数値データも相転移の解析に使える事になりました。これにより、スピングラス相転移は臨界指数も含めて精度良く同定することが出来ました。 カイラルグラス相転移については、ウインドウ測定を用いてもカイラルグラス相関長の誤差増大によって精度良く求める事は非常に難しいです。それはカイラルグラス相関関数の振幅が非常に小さいため起こります。これを「ベイズ推定による相関長評価法」を開発する事により解決しました。これは全く新しい相関長評価法です。その結果、スピングラスとカイラルグラスは同時に相転移し、臨界指数νの値も近い値:ほぼ同じ相転移を強く示唆する結果を得ました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハイゼンベルグ模型に関する研究については順調に研究が進んだが、イジング模型については遅れている。前者は、グラフィックボードによる計算コードの開発が短時間で出来たが、後者はそれがまだうまく行ってない事が第一の理由である。また、当初予定していたエフォートを確保できなかったのも一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハイゼンベルグ模型については、ランダムボンドの分布の違いについて検証を行う。解析法は確立しているので、数値計算は新たなプログラム開発のバックグラウンドで行える。 そのうえで、ハイゼンベルグ模型において開発した「ベイズ推定による相関長評価法」をイジング模型へと応用する。動的相関長スケーリングを転移温度近傍で行い、臨界状態が連続的に存在するかを検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に行った研究会の旅費の執行が次年度に繰越になったため。また、外部講師を招いてセミナーを行うなどの活動が出来なかったため。 最終年度ということで、成果をまとめその内容を議論しあうワークショップを行う予定。その旅費や謝金として使う予定。
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Research Products
(1 results)