2013 Fiscal Year Research-status Report
ノイズや環境変化に頑健で機能的なネットワーク型力学系の設計と熱力学的特性
Project/Area Number |
24540417
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
柳田 達雄 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (80242262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 裕也 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (40344048)
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Keywords | ネットワーク型力学系 / 位相振動子 / マルコフ連鎖 / モンテカルロ法 / 比熱異常 / 力学系設計 |
Research Abstract |
自然界には動的素子が非一様に相互作用して外乱に対して安定に機能するシステムが多く存在する.例えば,細胞内における生化学反応や遺伝子発現では多数の機能分子が関与していながら安定なダイナミクスが創出されている.本研究は,所与された機能を実現するようにネットワーク型力学系の設計を行い,機能・結合構造・統計特性の関係からノイズや環境変動に抗して頑健なダイナミクスを出現させる数理構造の解明を目指した. 1.頑健な機能的ネットワーク型力学系の設計---前年度までの研究成果を踏まえ,本年度は外部ノイズに対して頑健に同期するネットワーク型力学系の設計を行った.特に,これまで時間発展によって評価した結合位相振動子の同期度をネットワークのラプラス行列の固有値により評価した.これにより,より大きなネットワークが精度良く設計することが可能となり,これまで得ることが難しかった熱力学量などの推定ができるようになった. 2.ノイズや環境変化に頑健なネットワーク型力学系の構造と熱力学的特性---パラレルテンパリングにより得られたの異なる複数温度のサンプリング・データにWHAM法を適用して状態密度関数を推定した.この状態密度関数より様々な最適同期ネットワークの熱力学量を求めた.疎結合の場合に,有限温度で比熱異常を確認し学会等で発表した. 3.複雑な所与された力学系の機能として「時系列の統計的性質」を用いたネットワーク型力学系のデザインの試みを開始した.その第一歩として,所与された周波数特性を持つ時系列を生成するネットワーク型力学系の設計を行い,パラレルテンパリング法で設計が可能であるなど予備的な結果が得られた.このような機能力学の設計は電気回路などへの応用が考えられ今後の発展が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネットワーク型力学系を設計するための基礎的なアルゴリズム,パラレルテンパリング法(マルコフ連鎖モンテカルロ法)がこれまで研究によりほぼ確立されたので,これらの成果を用いて以下の課題を推進させた. 1.大自由度のネットワーク結合位相振動子の設計を行うため,同期度をネットワークのラプラス行列の固有値を用いて評価した.この評価は幾つかの仮定の下で成り立つが,これにより従来の時間発展による評価に比べ精度良く求めることができ,大きなネットワークの設計が可能となった. 2.統計力学とのアナロジーから状態密度関数をWHAM法により推定して熱力学的特性を明らかにした.特に,ノイズに対して頑健なネットワーク型力学系は疎結合の場合には比熱異常を示す事が明らかになった.これは固体物理でいうショットキー型の比熱異常であることが明らかになりつつある.今後はこの比熱異常の数理的起源の解明する. 3.力学系が創出する機能として「時系列の統計的性質」を用いた研究を試み,ネットワーク型力学系の応用を目指した.予備的数値計算では所与されたパワースペクトルを生成するネットワーク型力学系の設計に成功している.このような力学系の設計は,周波数特性を機能と見れば「ノイズ生成器」「信号生成器」としての応用の第一歩となり今後の進展が期待される. 以上より,本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
1.力学系が創出する複雑な機能の設計:ネットワーク型力学系は電気回路・生態系・脳など様々な分野でみられ,その局所的な力学が結合することにより豊かなダイナミクスが生み出され,機能創発の源泉である.例えば,電子回路などへの具体的な応用には,時間遅れを持つ結合型力学系の設計が必要となり,大自由度ネットワーク力学系の設計が必要となろう.そのための方法論(モンテカルロ法の有効な変数の取り方やムーブ法)の開発を推進させる. 2.予備的な結果が得られてる統計的性質が所与された時系列を生成させるネットワーク型力学系デザインを完成させるとともに,実際の電気回路に適応できるように局所ダイナミクスをファンデルポール型の力学系としたネットワーク力学系とする.これにより,簡便なノイズ生成回路を与えることができ様々な応用が可能となる.これには国内外の研究者(フリッツハーバー研究所・Alexander・Mikhailov教授)との研究情報の交換,また,共同研究者との頻繁な議論による研究推進させる. 3.計算アルゴリムの超並列化:複雑な機能特性をしたネットワーク型力学系の設計は自由度が増大する.現時点ではOpenMPを用いた複数コアの並列計算をしているが,さらに複数台計算機を用いたMPIにより超並列化を行い大規模なネットワーク力学系の設計に対処する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新型機種の計算システムの納入が遅れが生じる可能性があったため,次年度の納入に繰り越したため. 新計算機システムの発注を敏速に行い,早期納入する
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