2013 Fiscal Year Research-status Report
第一原理計算によるスピン軌道相互作用系の電界効果の研究
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24540420
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
三宅 隆 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (30332638)
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Keywords | 第一原理計算 / スピン軌道相互作用 / 密度汎関数法 |
Research Abstract |
昨年度着手した軌道磁気モーメントに基づいた結晶磁気異方性の計算手法の開発を行った。スピン軌道相互作用を摂動とした2次摂動に基づき、軌道磁気モーメント行列(スピンで分解した2x2行列)を用いた公式を導出した。この公式は、交換分裂が大きく、マジョリティスピンが完全に占有されている場合はBrunoの公式に帰着する。L10型合金に適用し、スピン反転項が無視できないことを見いだした。また、新たな課題として三方晶テルルとセレンの電子構造を調べた。これらの物質は螺旋構造が配置された構造をもち、空間反転対称性がない。セレンに比べてテルルは原子番号が大きいためスピン軌道相互作用が大きく、結晶内での電場がスピン軌道相互作用を介して電子構造に与える影響に興味がもたれる。標準的な局所密度近似(LDA)ではテルルが金属と誤って記述されるため、GW近似による自己エネルギー補正を加えた。自己エネルギーにはFull-potential LMTOコードを用い、最局在ワニエ軌道で行列表示してQMASによるLDA+SOのハミルトニアンに加え、準粒子バンド構造を求めた。バンドギャップの計算値はテルル(セレン)で0.314eV (1.7eV)で、実験値の0.323eV (2.0eV)とよい一致を示す。またフェルミ準位近傍に複数のディラック点が存在することがわかった。伝導帯の底はSOIを無視した場合はH点に位置するが、SOIを入れるとスピン分裂を生じ、H点からわずかにずれる。これは結晶内の電場による相対論効果と考えられるが、通常のラシュバ効果と異なりスピンはH点の周りで大きな動径成分をもつ。圧力をかけると絶縁体から金属に転移するが、これに伴って、H点の周りでのスピンの回転数が変わりうることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はテルルの計算を行った結果、内部電場によるスピン軌道相互作用効果において想定していなかった興味深い結果を得ることができた。その分、当初の計画であった遷移金属化合物への応用、特に外部電界効果が実行できなかったため、この点に関してやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
テルルの研究結果は空間反転対称性の破れた系でのスピン軌道相互作用効果であり、興味深い。次年度はこの研究を拡張する予定である。類似物質も含めて計算を継続させる。薄膜での外部電場効果にも興味がもたれる。テルルではスピン軌道相互作用効果のエネルギースケールが小さく、膜厚依存性が鍵をにぎるが、計算量が許せば表面効果を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はテルルの計算を中心に行ったが、単位胞に3原子と小さな系であったため、スパコンセンターの計算機使用料が不要であった。 スピン軌道相互作用系における電子相関効果の議論のため、スウェーデンへの出張費に使用する。
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