2013 Fiscal Year Research-status Report
経路干渉計法を用いた光子対の軌道角運動量もつれ合い状態の検出に関する研究
Project/Area Number |
24540424
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
宮本 洋子 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (50281655)
|
Keywords | 光の軌道角運動量 / もつれ合い / 量子情報 / ホログラム / 光子相関 / 国際研究者交流 / オーストラリア |
Research Abstract |
本研究は経路干渉計法を用いた光子対の軌道角運動量もつれ合い状態検出の特徴を実験的に明らかにすることを目的としている。経路干渉計法は軌道角運動量重ね合わせ状態の検出手法の1つであり、従来法のホログラムシフト法と比べて観測基底から対象外成分を効果的に排除することが特徴である。平成25年度は両ホログラムシフト法の評価に取り組んだが、当初計画で予定したハイブリッド法の実験は行わなかった。両経路干渉計法や完全な Einstein-Podolsky-Rosen 型実験に向けて、励起光源の再検討とホログラム作製条件の評価を行った。 両ホログラムシフト法は光子対の両方にホログラムシフト法を用いるもつれ合い状態検出手法である。この手法による実験結果とこれまでの成果である理論 [Kawase et al., J. Opt. Soc. Am. B (2009)] との比較を行った。対象外成分がもつれ合いの評価に与える影響を検討した [Miyamoto, LPHYS '13 (2013)]。 励起光源はもつれ合い光子対を生成するために用いるもので、実験系の見直しにより 3-30 mm のコヒーレンス長を確保する必要が生じたため、外部共振器付き半導体レーザーを作製することになった。設計と性能評価手法の検討を行った [舘野 他、情報フォトニクス研究会関東学生研究論文講演会 (2014)]。 ホログラム作製条件については、新しい電子線露光装置やホログラム材料について電子線照射条件と加工深さの関係の検討を行った[亀井 他、Optics and Photonics Japan 2013 (2013)]。 これらと並行して、前年度に提案・実証を行った複屈折結晶中での光渦の伝搬を観察するための複屈折干渉計について、複雑な偏光分布に発展する様子をより詳しく観察するために実験系の改良を行った [Brundavanam et al., Fringe 2013 (2013)]。また、Molina-Terriza 氏(海外研究協力者)を招へいし実験系について議論を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は両ホログラムシフト法とハイブリッド法の比較を行い、さらに次年度の両経路干渉計法および Einstein-Podolsky-Rosen 型の実験のための検討を開始する計画であった。また Molina-Terriza 氏を招へいして議論を行うことを予定していた。このうち、両ホログラムシフト法の評価に取り組んだが、ハイブリッド法の実験は行っていない。両経路干渉計法や完全な Einstein-Podolsky-Rosen 型実験に向けた検討は予定通り開始し、Molina-Terriza 氏の招へいも予定通り11月に行った。 ハイブリッド法の実験に至らなかった理由の1つは新しい励起光源の検討の方を先行させたことである。ハイブリッド法は光子対の一方に本研究の主題である経路干渉計法、他方に従来法のホログラムシフト法を用いてもつれ合い状態を検出する手法である。コヒーレンス長の長い励起光源を整備した後の方が、経路干渉計部分の組み立てが容易になると判断した。 2つ目の理由は、ホログラム作製に使用する共用設備の電子ビーム露光装置が平成25年度に更新されたが、ホログラム作製で重要なビットマップ露光機能の実装が遅れたことである。そこで実装を待つ期間を利用して、新しい電子線露光装置の評価に加えて新規のホログラム材料の特性評価を行った。これまで使用していた材料は価格が高騰しており、また将来的に入手困難になることも想定されるため、新しい材料でホログラムを作製できるよう基礎データを整備した。 以上から、研究の進行は若干遅れているが、今後の進展につながる成果が得られている。関連した研究である複屈折結晶中の光渦の振舞いの観察手法についても実験系の改良を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画の主な変更はハイブリッド法の実験の平成25年度から26年度への変更と、コヒーレンス長を改善した励起光源の導入である。 平成26年度:前年度の検討をもとに、外部共振器付き半導体レーザーによる新しい励起光源を作製する。コヒーレンス長とビーム形状の評価を行った後、非線形結晶に入射し、もつれ合い光子対の生成を行う。新しい励起光源の元で、まず軌道角運動量の古典的な相関の確認と両ホログラムシフト法の実験を行う。次に光子対の一方に経路干渉計法を導入してハイブリッド法によるもつれ合い状態検出実験を行い、両ホログラムシフト法との比較を行う。さらにもう一方の光子にも経路干渉計法を導入し、両経路干渉計法によるもつれ合い検出に着手することを目標とする。両ホログラムシフト法で観察される観測基底中の対象外成分の影響が、ハイブリッド法と両経路干渉計法で排除されることを確認し、研究全体のまとめを行う。 余裕があればさらに高度な実験として、完全な Einstein-Podolsky-Rosen 型のもつれ合い状態検出実験に着手する。この実験では経路干渉計法を2つの排他的な結果のどちらかを与える2出力の検出器として用い(2出力経路干渉計法)、これを光子対の両方に用いてもつれ合い検出実験を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額445,662円が生じた主な原因は、Molina-Terriza 氏(海外研究協力者)の来日について、別の予算から旅費を支出することが可能となったためである。 平成26年度請求額と合わせて次年度は1,245,662円を使用する。 物品費(695,662円)は実験系の改良および両経路干渉計法への拡張のための光学部品、ファイバー干渉計部品、ホログラム作製材料等を購入する。旅費(500,000円)は国際会議での招待講演1件(ブルガリア)のための渡航を予定している。その他(50,000円)は論文投稿費に使用する。
|