2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540426
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉川 豊 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00345076)
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Keywords | 量子エレクトロニクス / 原子物理学 / レーザー冷却 |
Research Abstract |
近年レーザー冷却技術の目覚ましい発展により、希薄気体におけるボース凝縮やフェルミ縮退などの巨視的な量子現象が比較的容易に観測できるようになった。さらに最近では、この様な極低温原子に対して3次元的な光の定在波を加え、原子を定在波の腹の部分に周期的に捕獲する光格子と呼ばれる技術が注目を集めている。本研究の目的は、量子縮退した冷却イッテルビウム原子を3次元光格子に閉じ込め、光磁気共鳴イメージングと呼ばれる手法を用いて光格子各点の原子に個別にアドレッシングし、その量子状態をコヒーレントに制御する技術を開発すること、さらに超高分解能の結像系を構築し、格子点の個々の原子を直接観測する量子気体顕微鏡を作製することにあった。 平成25年度は、量子気体顕微鏡の実現のため、2本の光ビームを浅い角度で交差させ格子定数の大きな2次元光格子を作って、その一層にのみ原子を捕獲した。これによりMott絶縁体を生成した際にも確実に個々の原子にフォーカスが合うことが保証され、実験系の信頼性が大幅に向上する。また、蛍光観測のためのプローブ光の他に、原子の加熱を抑制するための冷却光を準備した。これにより100マイクロK程度の光ポテンシャルに対して原子の平衡温度を10マイクロK程度に抑えることができ、長時間露光が可能な高感度低ノイズな原子蛍光撮像システムを構築することができた。最後に光磁気共鳴イメージングの技術を併合し、不均一磁場中で冷却原子の断層撮像を行うための準備を行い、簡単な予備実験を行った。これにより原子の内部状態を空間の位置情報に焼きなおすことができ、各光格子点の個別操作により高い自由度をもたらすことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の流れとして、①光磁気共鳴イメージングの実現と単一サイト分解能でのスペクトルの観測、②量子気体顕微鏡による2次元Mott絶縁体の単一サイト分解能での蛍光観測、③各光格子点の量子操作の大きな3つのステップがある。 研究2年目の大きな目標としては、②の量子気体顕微鏡の実現が挙げられる。しかし、実際には単一サイト分解能は得られておらず、2次元系に捕獲したバルクの冷却原子を観測するに留まっている。これは実験系構築に予想よりも長い時間が必要であったとともに、光学系の機械的安定性を光格子定数よりも小さくするのが難しいことが主な原因である。このような現状を踏まえると、研究は当初の計画よりもやや遅れているとの評価に至る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、量子気体顕微鏡の実現を目指す。すなわち、単一サイト分解能での光格子点の個別観測を行う。このために、現在明らかとなっている問題点(装置や対物レンズの機会的安定度)を改善する。具体的には、対物レンズマウントと光格子を作るための光学系を1つのモノリシックな構造体に設置し、振動ノイズをコモンモードとして除去できるよう、装置の改良を行う。また、除振台上に強固な風防を設置するなどして、外部振動自体を極限まで低減させる。さらには、原子蛍光のムラを低減するための光ビームの空間掃引装置の追加、迷光低減のための空間フィルターの設置、冷却光のパラメータの検証などの細かな点の最適化をして装置の性能向上を目指す。 また量子気体顕微鏡の完成を急ぐとともに、その応用実験を含めた光格子点の個別操作に向けた予備実験にも着手する。具体的には、フェルミオンの単一原子観測を見据えた173Ybや171Ybの2次元光格子へのロードや冷却光、プローブ光のパラメータ調整等を行い、量子気体顕微鏡完成時に速やかに応用実験に移行できるよう準備を進めておく。
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