2012 Fiscal Year Research-status Report
マウス骨格筋内分子ナノイメージングによる生命機能と階層性の関わりの解明
Project/Area Number |
24540430
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
茅 元司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00422098)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生物物理 |
Research Abstract |
本研究では,1)マウスin vivo骨格筋のアクチンフィラメント1本を蛍光標識する方法を構築し,アクチンフィラメントの伸びを求める; 2)アクチンフィラメント1本の伸びから,ミオシンフィラメントの発する力を見積り.筋肉全体の発する力と比較することで,ミオシンフィラメントの力発生が上位階層構造体である筋肉の収縮力に対してどのように変調されていくのかを明らかにする.これらを目的として,当該年度では,まず筋肉内に量子ドットを導入する方法,あるいはGFP融合標的タンパク質を発現させる方法を検討した.量子ドットも標的タンパク質の遺伝子も,筋肉内の至る所に分布するコラーゲン繊維膜に絡み取られるようで,効率的に筋肉内へ導入する方法が見つかっていないのが現状である.しかしながら,約10%程度の量子ドットは,観察に用いる共焦点顕微鏡でアクセスできる筋表面付近のサルコメア内に導入されていることが確認できた.これらの量子ドットに高出力グリーンレーザーを照射して,筋弛緩時における量子ドットの揺らぎを計測したところ,7-10nm(10フレーム/秒)であった.今後は,さらに測定精度を上げる工夫をしていく. 標的タンパク質の発現については,発現効率は低いが,ほぼ毎回筋肉内の一部に発現が確認され,さらにコラゲナーゼ処理によるコラーゲン繊維の崩壊を施して遺伝子導入したところ,発現効率が若干向上した.今後,エレクトロポレーションや微弱電量による導入効率の向上を検討していく予定である.こうしたin vivo筋肉への量子ドット導入やタンパク質の発現手法の確立は,マウスin vivo分子イメージングの新しい手法として,様々な研究分野への普及が期待できる.また筋肉組織と下位階層構造体の動態を同時に計測できることから,分子,分子集合体,そして組織に至るまでの階層間の機能発現メカニズムをつなぐことができると期待している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画より遅れている最大の理由は,筋肉内への量子ドットや遺伝子の導入効率を上げる手法が未だに確立できない点に帰する.筋肉は,筋全体を包むコラーゲン線維膜だけでなく,その中の筋繊維束,筋繊維,筋原線維とより下位階層の構造体に至るまでコラーゲン繊維膜に覆われているため,これらの膜を物理的に貫通して量子ドットや遺伝子をサルコメア内へ到達させないとアクチンフィラメントの標識は難しい.この方法を確立することが,本申請研究を成功させる最大のキーポイントである.
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Strategy for Future Research Activity |
筋肉内への導入効率を促進させる方法として,エレクトロポレーションによる膜貫通を促進させる方法を試みる.また微弱電流によりカベオリン系のエンドサイトーシスを誘導する方法も近年報告されており,この方法も試みていく.さらにコラゲナーゼ処理によりコラーゲン繊維を崩壊させて,量子ドットや遺伝子がトラップされる頻度を削減させる方法も並行して検討していく.もし,こうした方法でも導入効率が上がらない場合には,筋原線維での実験系を検討していく.筋原線維は,in vivo単一筋に比べてダメージを受けやすく不安定であるが,コラーゲン繊維膜が完全に除去された状態でサルコメア構造が保たれた最小構造体であるため,本研究の目的であるアクチンフィラメント1本の標識には適した実験系と考えている.筋原線維のダメージを軽減させる工夫として,caged ATPを入れてUV照射時のみにATPが誘導されて収縮がおきるように実験系をデザインして,サルコメアの崩壊を最小限に防ぐ工夫をしていく.顕微鏡の測定精度に関しては,3-5nm程度の精度にするため,顕微鏡周辺部,とくに電動ステージの剛性を高める工夫を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は,進行が遅れている量子ドット,遺伝子導入条件の検討と並行して,顕微鏡上にフィードバックシステムを組み込んでいく.筋肉は収縮すると3次元的に変形する.従って,通常の顕微鏡では同一焦点画面の確保が極めて困難である.そこで焦点面上にある対象像を高速で追従するフィードバック制御を対物レンズとステージに対して施す.現在,電動ステージの方はその開発が進んでいるが,対物レンズに関してはピエゾアクチュエータを取り付ける必要がある.顕微鏡脇にイメージングスプリッターを取り付けることにより,蛍光画像を波長域別に分けることができるので,長波長域側の光路上に高速度カメラを設置して,長波長蛍光像(例えばDRAQ5による700nm付近の核蛍光像)を追従し,ステージや対物レンズの位置を制御する.またマウス,飼育機器,試薬の購入は逐次行なっていく.
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Research Products
(5 results)