2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540439
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
好村 滋行 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90234715)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 和彦 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (60344115)
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Keywords | 生体膜 / 膜タンパク質 / ブラウン運動 / 異常拡散 |
Research Abstract |
本研究では、多成分生体膜における動的な不均一構造の物理的起原を、周囲の溶媒も含めた流体力学的効果および粘弾性効果を詳細に検討することを目的としている。生体膜上の相分離にともなうドメイン成長は、近年、実験的にも理論的にも調べられつつある。これまでの理論的な取り扱いでは、無限に広い二次元膜を考えていたが、実験的には閉じたベシクル上での相分離を観察することが多い。平成25年度は、ベシクルが有限の半径をもつ球面と仮定して、その表面を拡散する円形状ドメインの定常状態における衝突頻度を解析的に求めた。さらにその結果とスモルコフスキーの理論を用いて、平均のドメインサイズが漸近的に時間の1/2乗に比例して増大することを示した。 また、別の研究実績としては、脂質二重膜におけるリーフレット拡散の問題を考察した。これまでの生体膜のモデルでは、脂質二重膜を単一の二次元流体として扱い、その中での拡散の振る舞いなどが議論されてきた。近年の実験的技術の進展により、一方の単層膜(リーフレット)のみに含まれるタンパク質やドメインのダイナミクスに関する知見が得られるようになってきている。我々は、脂質二重膜を二枚の結合した二次元流体として扱い、周囲の非対称な溶媒も取り入れた流体モデルを考察した。特に二枚のリーフレット間には、速度差に比例する摩擦力が働くとした。具体的な計算として、液体ドメインの拡散係数の摩擦係数依存性や、サイズ依存性などを詳細に調べた。最終的に、リーフレット間の摩擦だけでは、有限の拡散係数が得られないことを解析的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度にはベシクル上のドメインの成長則と、脂質二重膜におけるリーフレット拡散についての研究を終えており、どちらの内容も論文として公表することができた。また、新たな研究テーマについても具体的な結果が得られつつあるため、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は多成分脂質二重膜における粘性モードについての研究を行う予定である。脂質二重膜で曲げ変形が生じると、二枚の単層膜はそれぞれ圧縮または膨張するため、曲げモードと圧縮モードが結合する。我々は、脂質二重膜が二成分で構成される場合を考察して、二成分間の相互作用が二重膜のダイナミクスに及ぼす影響について調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年末に発売されたMac Proを購入し、シミュレーションを行う予定であったが、品薄のため、平成25年度内の納品ができなかった。 平成26年度には速やかにMac Proを購入し、積層脂質膜のモンテカルロ・シミュレーションを行う予定である。
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Research Products
(10 results)