2013 Fiscal Year Research-status Report
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24540441
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高野 宏 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (90154806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩田 克美 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, その他部局等, 講師 (80305961)
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Keywords | 非線状高分子 / 粗視化高分子模型 / シミュレーション / 緩和モード解析 / 緩和モード / 緩和率 |
Research Abstract |
1.孤立星型高分子に対し、排除体積相互作用を取り入れ、流体力学的相互作用を無視した粗視化高分子模型を用いて分子動力学シミュレーションを行い、排除体積相互作用が無いときの緩和モードの自己相関関数を計算し、その長時間での振舞いから緩和率を評価した。星型高分子の構造は、中心での分岐数と、各枝の長さというパラメターで特徴付けられる。昨年度、枝の交換に対して符号を変る反対称モードの一番遅い緩和率が、枝の位置の交換に対応する緩和率のスケーリング則とは僅かに異なっていた。これは分岐数が大きくなると中心のセグメント上で枝の密度が高くなり、枝の交換が阻害されているためと考えられる。そこで、枝の密度が一定となるよう分岐数に応じて中心のセグメントを大きくとってシミュレーションを行ったが、逆に緩和率の分岐数依存性に系統的ずれが生じた。今後更に検討が必要である。 2.2つの環状高分子が絡み目を作っている系を、排除体積を持たない線形バネで繋がれた環状高分子2つがそれぞれの重心が線形バネで繋がれた模型で検討した。緩和モードが、重心間を繋ぐべクトルのモードと単体の環状高分子と同じ緩和モードになることがわかった。排除体積がある場合にも、緩和モード解析を行なうと、同様の緩和モードが得られることがわかった。 3.ヘテロな形状をもつ孤立非線状高分子の遅い緩和モード・緩和率を効率よく評価する方法を検討した。連結行列や主成分分析(PCA)、速い時刻での時間相関行列の緩和モード解析(RMA)などで仮のモードを評価し、そのモードに関する時間相関行列を緩和モード解析し、合成により遅い緩和モードを評価する方法の有効性を確認した。また、ガラス転移温度付近で一部分がガラス化しうる成分を含むヘテロな孤立高分子の系において、PCAとRMAで、第2第3モードの形が異なる事例等を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、孤立非線状高分子の緩和の解析を終了する予定であった。孤立星型高分子に関しては、昨年度得られた結果が理論的予想と僅かに異なる原因を明らかにするために、新たなシミュレーションを行なったが、解決せず更なる検討が必要となった。この結果、次年度も引き続き孤立星型高分子の緩和について解析することになり、当初の計画より遅れることとなった。 ヘテロな形状をもつ孤立非線状高分子の遅い緩和モード・緩和率を系統的に評価する方法として、連結行列や主成分分析(PCA)、速い時刻の時間相関行列の緩和モード(RMA)を仮のモードとして、固有値解法の数値精度を高めることで、遅い緩和モード・緩和率を評価する枠組みが機能することを確かめた。一方で、ガラス転移温度に近い温度の系では、PCAとRMA間でモードの形が異なる事が、新たに見出された。タンパクなどの全原子MDで相互作用がヘテロであったり、温度に敏感であったりする場合のその影響の評価が、新たな研究の方向性として見出された。孤立高分子鎖の計算を拡大し、非線状高分子の溶融体や、線状高分子溶融体中の孤立非線状高分子鎖の挙動をシミュレーションするために、大規模並列環境でのLAMMPSを用いた並列計算実施と効率的な分散データ記録などを検討し、緩和モード解析のための解析フレームワークを整備した。これらのシミュレーションや解析を行うためのプログラムやコードに関する技術的側面についても、研究グループ内で議論検討した。 以上の2点を考えると、当初の研究計画からは遅れた面もあるが、新しい解析方法の枠組みが見い出され、大規模シミュレーションの準備も進み、研究目的に対する達成度としては、全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請時の研究計画からは、遅れた面もあるが、研究計画で扱う予定であった系を調べていく。昨年度より扱い始めたヘテロな形状をもつ孤立非線状高分子も引き続き調べる。さらに、今年度予備的研究を行った、絡み目をもつ2つの環状高分子の系についても研究を進める。研究内容が増えるため、扱う非線状高分子の種類を厳選することが必要になる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はシミュレーション結果および解析結果を格納する大容量のディスクシステムを導入し利用するために研究代表者の直接経費の大部分を使用した。結果として、僅かに残額が生じてしまった。 次年度は、交付申請書のとおり、物品費、旅費、その他に直接経費を使用する予定であるが、当該助成金をその費用の一部にあてる予定である。
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