2013 Fiscal Year Research-status Report
界面に吸着したタンパク質のリアルタイム構造可視化システムの開発
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24540444
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
矢野 陽子 (藤原 陽子) 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70255264)
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Keywords | X線反射率法 / たんぱく質 / 固液界面 / 赤外吸収分光法 |
Research Abstract |
タンパク質と界面の相互作用を知ることは、クロマトグラフィーによるタンパク質の分離・精製、食品や医薬品、人工組織や生体物質を使った新しい機能性材料の開発など、医学的および技術的応用の両面において非常に重要である。本研究では、固液界面に吸着したタンパク質の2次および3次構造をリアルタイムで可視化するための装置を開発する。2次構造の検出には全反射赤外分光法(ATR-FTIR)、3次構造の検出にはX線反射率法(XRR)を用いる。秒オーダーの時間分解能で固液界面に吸着したタンパク質の立体構造を観測することを目指す。そのためにエネルギー分散型X線反射率装置(ED-XRR)を新規に立ち上げ、23年度に近畿大学の研究費で購入したATR-FTIRと組み合わせる。2年目に当たるH25年度は、以下の研究成果を得た。 (1) ED-XRR装置による反射率測定 H24年度に製作したエネルギー分散型X線反射率測定装置(ED-XRR)の性能評価を行った。試料としてシリコンウエハーとDVDを用いた。H24年度には、検出器にイメージングプレートを用いて鏡面反射を観測することに成功していたが、本年度はCdTe検出器を用い、エネルギープロファイルを得ることができた。また、測定時間10分で5桁の反射率曲線を得ることに成功した。しかしながら、視射角わずか0.1度という条件で測定を行わねばならず、入射角度の設定、試料の高さ調整、ダイレクトビームとの分離に課題が残る。 (2) ATR-FTIR装置を使った時分割測定 現有のATR-FTIR装置(サーモフィッシャーNicolet iS5 FT-IR)を使って、時間分解能1分以内で時分割測定を行うことに成功した。その結果、球状タンパク質リゾチームの固液界面吸着過程においてβシートの割合が増加することを観測した。しかしながら長時間の測定には、試料溶液の蒸発を防ぐための工夫が必要だということがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書では、2年目に当たる本年度は、「試料の温度コントロールシステムの開発および現有(2011年度購入予定)の全反射型フーリエ変換赤外分光装置(ATR-FTIR)と組み合わせたED-XRR/ATR-FTIRシステムの構築」であったが、初年度にED-XRRとATR-FTIRそれぞれに想定外の問題が生じたため、それら問題を解決することに費やした。以下に詳細を記す。 (1) ED-XRR装置 界面に対するX線の入射角度は約0.1度程度であるため、ビームの発散角が入射角よりも大きくなってしまうという問題があった。本年度は、スリットサイズを0.1mmまでに絞り、昨年度よりもシャープな鏡面反射を観測することができた。しかしながら、入射スリットおよび検出スリットそれぞれを載せたアームが自重により傾き、角度を精確に設定することが困難であることがわかった。そこで本年度はレーザー変位計を購入して、傾き調整機構を設置する。購入するレーザー変位計については、すでにED-XRR装置に組み込むテスト済みである。 (2) ATR-FTIR装置の評価 昨年度は、低濃度領域では、水蒸気の回帰線が重なって精度よく解析ができないことがわかった。これは、バックグラウンドの測定を試料測定の直前にすることができない時分割測定を行うには致命的であったそこで、本年度はパージキットを購入して、窒素ガス雰囲気にしたところ、水蒸気の回帰線が激減した。一方、試料溶液の蒸発を防ぐためには、試料を密閉性の高いセルに封入しなければならないということがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ED-XRR/ATR-FTIRシステムの構築とタンパク質の界面吸着過程の時分割測定 下記(1)(2)の問題を解決した後、ATR-FTIR装置をZ軸大型ステージに載せてED-XRR装置と高さを合わせる。2つの測定を同期させるように、コンピュータで制御するプログラムをLabViewを使って作成する。完成後は本装置を用いてタンパク質の界面吸着過程の時分割測定を行う。さらに空間および時間分解能を上げるために、SPring-8の溶液界面反射率計を用いて併用測定を行う。 (1) ED-XRR装置 本年度はレーザー変位計を購入して、傾き調整機構を設置する。購入するレーザー変位計については、すでにED-XRR装置に組み込むテスト済みである。 (2) ATR-FTIR装置 試料溶液の蒸発を防ぐために、X線透過窓のついた密閉性のセルを製作する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
想定外の問題が起こったため、温度コントロールシステムを立ち上げることが出来なかった。 次年度繰越金は、温度コントローラの購入に用いる。 一方、2014年度の請求額(直接経費:1000千円、間接経費:300千円)は、光学系の水平を計測するためのレーザ変位センサや測定試料に用いる。また空間および時間分解能を上げるために、SPring-8やKEKの溶液界面反射率計を用いて併用測定を行うので、その際の旅費および消耗品費にあてる。さらには研究成果をまとめて論文投稿するための費用に用いる。
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Research Products
(7 results)