2013 Fiscal Year Research-status Report
不均質構造における地震波伝播とノイズ相互相関に基づくグリーン関数導出法の研究
Project/Area Number |
24540448
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 春夫 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80225987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 太志 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40222187)
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Keywords | 地震 / 火山 / 地下構造 / 地震波動 / 不均質 / ノイズ / 固体地球 / フラクタル |
Research Abstract |
固体地球の不均質構造の解明はテクトニクス的形成史を考える上からも重要である.地震波の波長と不均質の尺度が同程度の場合には散乱の効果が大きく,特に短周期の観測波形にはコーダ波の励起が著しく,直達波のエンベロープの見かけ継続時間は震源継続時間よりも長くなる.これらの現象は,短波長のランダム不均質構造が層構造の上に重畳していることを強く示唆する.本研究の目的は,短周期地震波動伝播の数理論を構築することであり,それに基づいて地震観測データを解析し固体地球のランダム不均質構造を明らかにする.一方,位相情報に着目した不均質構造推定法としてノイズ相互相関関数に基づくグリーン関数導出法があるが,本研究では散乱形式による定式化を行い,その数理的基礎を確立する. 今年度は,2つの問題に取り組んだ.短周期地震波に対する散乱源がクラスター的であることから,数理的にはフラクタル的な散乱体の空間分布を考え,その中での波動エネルギーの散乱伝播過程の数理的記述の構築を達成した.具体的には,輻射伝達方程式という積分方程式で記述することが可能である.ここに提唱したフラクタルモデルによれば,直達波の振幅の距離減衰もコーダ波振幅の時間減衰も共に冪乗則に従うことが導かれる.この研究は学術誌Geophys. J. Int.に掲載された.もう一つの研究では,低速度物質が多数分布する中での波動伝播を共鳴散乱を考慮した輻射伝達方程式によって取り扱う方法を考案した.これは火山下に溶融物質が分布する中での地震波伝播のモデルとして重要なものであり,この成果を現在学術誌に投稿し,現在査読中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第2年度は,地震波伝播に関するフラクタルモデルの研究(Sato and Fukushima, 2013)と不近質構造における波動エンベロープに関する研究(Emoto et al. 2013),ならびに火山噴火のメカニズムに関する研究(Kawaguchi et al. 2013)の3編が学術雑誌に掲載された.現在,学術誌に投稿した共鳴散乱の輻射伝達理論に基づく研究の論文が査読中である. 初年度には,研究論文4編を学術誌に発表し,本研究の基礎となる地震波動の散乱に関する書籍を共同執筆してSpringer社より刊行した.第2年度春には,フランス・コルシカ島で開始された地球物理学を学ぶ若手研究者のための春の学校において,ノイズ相互相関関数に基づくグリーン関数導出法に関する講義を行った.夏には,ロシア・カムチャッカのムトノフスキー火山の山荘で開催された地球物理学・地質資源学を学ぶ若手研究者のための夏の学校において,火山における地震波動伝播の研究に関する講義を行った.いずれも,本研究課題の最新の成果を取り入れたものであり,国際的な若手研究者の育成に貢献している.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年に引き続き,以下の研究を継続発展させる.ランダム不均質構造における短周期地震波の伝播に関する研究として構築した輻射伝達理論に基づくフラクタルモデルを実用的なモデルへと発展させるために,数値シミュレーションの高度化に取り組む.平行して,火山地帯における不均質構造の数理表現の多様化の可能性を考察する.特に溶融体や水による低速度物質の存在が共鳴散乱を引き起こすモデルを精緻化し,波動論と輻射伝達理論の関係を確立することに取り組む. ノイズの相互相関関数からグリーン関数を求める研究分野では,特に内部減衰が存在する環境でランダムノイズ源が空間的に広く分布する場合,グリーン関数を波動場の相互相関関数から求める方法についての数理的考察を深め,その適用範囲を明らかにして行く予定である.ドイツと米国の研究者を訪問し意見交換を行い,数理的研究の深化を図る計画である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年4月末にウィーンで開催される欧州地球物理学会へ当研究成果を発表するために参加し,ドイツのライプチヒ大学と米国MITへ共同研究のために出張する予定である.この海外出張旅費にあてるために,当該年度は物品と消耗品の購入をできるだけ節約し次年度へ繰り越しを行った. 主に,航空機運賃 (東京ーライプチヒーウィーンーボストンー東京)と日当宿泊費用(ライプチヒーウィーン滞在)である.(ボストンにおける宿泊費用は共同研究者のMITが負担するため不要).このほか,計算機まわりの消耗品,老朽化したディスプレーの更新,学会出張費用に充当する予定である.
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Research Products
(5 results)