2012 Fiscal Year Research-status Report
東北地方太平洋沖地震の破壊過程:陸海統合3次元構造モデルに基づく最良解推定
Project/Area Number |
24540452
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡元 太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40270920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 博士 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30253397)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 東北地方太平洋沖地震 / GPU計算 / 破壊過程解析 / 強震動波形 / 遠地実体波波形 |
Research Abstract |
本年度は東日本全体にわたる陸海統合3次元構造モデルの作成と、3次元構造モデルにもとづく遠地実体波波形の検討を予定した。陸海統合3次元構造モデルについては、既存の複数の構造モデルをコンパイルして、陸上地形・海底地形・海水層・堆積物を含む3次元不均質構造を統合したモデルを作成した。このモデルは格子間隔250mで定義された18枚の境界面モデルから構成される。また強震動波形の評価を定量的に行うために、Qp, Qsを別個に利用する減衰構造モデルも導入した。このようにして構築した構造モデルについて次の検証を行った。(1) 減衰モデルの検証:非弾性減衰はメモリ変数の方法を用いて導入する。メモリ変数を多くすると広帯域で定数のQ値を実現できるが、必要とする記憶容量が大きくなる。そこでおよそ1-0.01Hzでほぼ定数Q値となる6要素の場合と、およそ1-0.02Hzでおおむね定数Q値となる3要素の場合の強震動理論波形とを比較した。その結果、両者の理論波形はほぼ一致することを確認できた。このことから、メモリ変数は3要素と設定することとした。(2) 観測波形との比較:2003年に宮城県沖で発生したMw5.8の低角逆断層型地震について、理論波形と観測波形とを比較し、理論波形が観測波形の特徴を良く再現できていることを確認した。この検討から、作成した3次元構造モデルを用いて強震動のグリーンテンソル波形を計算することとした。遠地実体波波形については3次元プレート境界面形状を考慮して曲面的な断層面を設定し、グリーンテンソル波形を計算した。ただしその計算自体は2.5次元計算法に従った。さらに、これらのグリーンテンソル波形を用いて、強震動波形データと遠地波形データの両方を用いる破壊過程逆解析手法を作成して、解析の準備を進めている。これらの成果は地震学会秋季大会やAGU大会などで報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的では3次元構造モデルの作成と3次元構造モデルにもとづく遠地実体波波形の計算を初年度をめどに行う予定としていた。3次元構造モデルについては作成をほぼ完了し、非弾性減衰モデルの検討、実際の観測データと理論波形の比較検討などを実施するなど、ほぼ当初目的を達成した。さらにグリーンテンソル波形の計算や破壊過程解析の準備も進めるなど、予定よりもいくらか先へ進展している。3次元構造モデルにもとづく遠地実体波波形の評価については、断層面形状を3次元的にするなどにより3次元性の導入やグリーンテンソル波形の計算・考察を行うことができた。ただし遠地実体波波形の計算には1次元の手法と2.5次元の手法を利用し、3次元計算には至らなかった点がやや遅れている。全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はほぼ予定通りに、陸海統合3次元構造モデルを用いた相反計算を行って、強震動データに関するグリーンテンソル波形を作成する。そして、遠地実体波波形に関するグリーンテンソル波形と合わせて、東北地方太平洋沖地震の破壊過程に関する逆問題解析を進める。得られた解については多面的に考察し、解の信頼性を十分に検討する。なお平成24年度は遠地実体波波形に関する3次元構造の影響についての考察が途中段階であったので、これについても今後継続して検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はとくにグリーンテンソル波形計算を進めていく予定である。この際には計算結果出力ファイルの合計サイズが非常に大きくなる。たとえば、現在のパラメータでは一観測点の一成分あたり約800GBのサイズとなる。そのため、これらの計算を進めるための計算機利用料金、およびデータを保管しておくための大容量RAIDなどを主な利用目的として研究費を利用する予定である。
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