2013 Fiscal Year Research-status Report
東北地方太平洋沖地震の破壊過程:陸海統合3次元構造モデルに基づく最良解推定
Project/Area Number |
24540452
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡元 太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40270920)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 博士 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30253397)
|
Keywords | 東北地方太平洋沖地震 / 破壊過程 / 強震動波形 / 遠地実体波波形 / 逆問題 / GPU計算 / 大規模計算 |
Research Abstract |
平成26年度には陸海統合3次元構造モデルを使って生成した近地強震動のグリーンテンソル波形を利用して、2011年東北地方太平洋沖地震の破壊過程の推定を行うことを予定した。具体的には次の研究を行った。(1)昨年度に構築した陸海統合3次元構造モデルによる近地強震動グリーンテンソル波形と、遠地実体波グリーンテンソル波形との2種類のデータを同時に用いる逆問題解析により、東北地方太平洋沖地震の破壊過程推定を行った。その結果、海溝近くではなく、震源近くに大きなすべり領域を持つすべり分布が得られた。(2)本研究で用いた手法や解析結果の分解能と信頼性を検討するために、近地波形のみを使った解析結果・遠地波形のみを使った解析結果・両者を統合した場合の解析結果のそれぞれについて相互比較を行い共通性や相違点を検討した。また、すべり分布を仮定した場合の合成データを生成し、破壊過程解析のシミュレーションを実行して分解能を考察するなどの多面的な考察を行った。その結果、深さ方向にのみ変化する1次元構造モデルを用いて不均質構造の効果を無視した場合には、分解能が低下して海溝近くにゴースト的なすべりが現れやすくなる傾向があることを示すことができた。不均質構造の効果を考慮した場合には、ゴーストが抑止される傾向があることも示された。これらの結果は不均質構造を考慮することの重要性を示すと考えた。(3)遠地実体波波形の計算において沈み込み帯の3次元的な構造変化の効果を取り入れるために、陸海統合3次元構造モデルから断層格子点に沿う23個の断面を抽出し、それぞれをもとにして2.5次元構造モデルを構築した。(4)これらの成果は日本地球惑星科学連合大会、日本地震学会秋季大会などで発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には2011年東北地方太平洋沖地震の破壊過程の推定を実施して解を得ることができた。さらに本手法の分解能や解の信頼度等を考察するための各種の多面的な検討(解の感度検討、データ別の解の特徴の検討、逆問題解析のシミュレーション等)を実施することができた。遠地実体波波形に対する3次元構造の効果については、断層モデルの場所ごとに異なる2.5次元構造モデルを新たに構築することで対応した。これらを総合的に判断して、おおむね順調に進んでいると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、ほぼ予定通りにフォワード計算や総合的な考察を行う。本研究で用いる方法では、観測点以外の場所での地震波波形を求めることはできない。そのため、東日本全域にわたる理論波動場を求めるためにはフォワード計算が必要となる。この計算により、破壊過程解析の逆問題では利用しなかった(多くの)観測波形と理論波形との詳細な比較検討が可能となる。これらのフォワード計算による比較検討と、破壊過程信頼度(解像度)等を総合的に考察し、推定した破壊過程が妥当なものであったかどうかを検証する。そして他の地球物理データとを総合的に考察して、この地震の全体像を明らかにすることを目指す。なお、並行して、昨年度に部分的に実施した遠地実体波波形の3次元構造の効果についても検討を継続する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に、解析結果確認のための大規模なフォワード計算を繰り返し実行することを予定しているため、次年度計算機利用のための使用額が生じた。また、計算結果を収納するための大容量記憶装置(RAID)をはじめとする物品費は、データの増加により予算よりも費用がかかることが明らかになったので、次年度にこれらを増強するための使用額が生じた。 上述のように、主として大規模計算のための計算機利用料金と、計算結果として得られる数値データを保存するための大容量記憶装置等の物品の利用料金として次年度使用額を利用する予定である。また、今年度は研究成果のまとめの年度でもあるので、国内外の学会等での発表を行うための旅費としても利用する。
|