2014 Fiscal Year Research-status Report
南西諸島最北部域のプレート間の固着と背弧拡大-宇治島での地殻変動・地震観測-
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24540458
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
後藤 和彦 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20244220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 茂 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (90237214)
八木原 寛 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (60295235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プレート間カップリング / 南西諸島 / 沖縄トラフ / GPS観測 / 地震観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレート間のカップリング(固着)が弱いと考えられている南西諸島北部域であるが,このことを実証する観測事実はほとんどない.地殻変動や地震の観測点が少ないうえに,沖縄トラフの拡大の影響が量的に明らかになっていないためである.これらの問題を解決するためには,既に観測網が整備されている海溝寄りのプレート収束域だけでなく,沖縄トラフがある背弧側での観測が重要である. 本研究は,南西諸島最北部の沖縄トラフの縁に位置する宇治島(無人島)において地殻変動と地震の観測を行うものである.宇治島での観測が実現すると,背弧側に面的に拡がりを持つ観測網が構築され,この領域の観測精度は飛躍的に高くなり,沖縄トラフの拡大の影響が評価できるとともに,プレート間カップリングの理解が大幅に進展することが期待できる. 本年度は2014年5月と2015年3月にデータ回収および観測機器の保守点検のために渡島した.現地に設置している機器はすべて順調に稼働しており,特に問題は生じていない.宇治島での観測データはようやく2年分が蓄積できたことになる.地震データは,小さな離島の観測点としては,かなり良質である.昨年度から予備的に始めていた宇治島周辺の既設観測点との併合処理による解析は,データが回収される度に逐次進めており,宇治島周辺の地震活動の実態が徐々に明らかになりつつある.地殻変動についても良好なデータが得られていることは確認できているが,本格的は解析は次年度以降と考えている.なお,地殻変動については,当該領域での観測網をさらに充実させれために屋久島と宇治島の間に位置する黒島でも新たな観測を別途経費で開始した.この黒島のデータも用いることにより,宇治島での観測の成果はさらに高くなるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
無人島での現地記録方式による観測は,当初危惧していた電源系のトラブルもなく,順調に実施できている.また,取得された観測データについても問題ないことが確認できている.特に地震データについては,当初は小さな離島の観測点であるために波浪によるノイズの影響を大きく受けるのではないかと危惧していたが,予想以上に良質なデータが取得できている. 今年度は研究開始から3年目であるが,初年度は観測点設置などに費やされており,実質的にはようやく2年分のデータを蓄積できた状況である.地震データについては周辺の地震観測点データとの併合処理・解析を逐次進めている.地殻変動については,もう1年程度のデータの蓄積を待って、本格的な解析を開始する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
「交付申請書」に記載した通りの方針で研究を推進する.すなわち,宇治島での地殻変動および地震の観測を継続して実施する.回収した地震データについては,既存地震観測点データとの併合処理・解析を継続して行う.次年度は,特に深発地震の震源再決定を実施して,陸域下に沈み込むフィリピン海プレートの詳細形状について検討する.地殻変動データについては予備的な解析を開始し,次々年度の本格的は解析の準備に取り掛かる. なお,これまでは順調に観測を実施できているが,無人島での観測であるために想定外のトラブルに対応しなければならないこともありうると考えている.次年度の渡島回数は当初計画のとおり2回を考えているが,トラブル発生時にはさらに渡島回数は増える可能性がある.その場合には今年度にでた未使用額をその財源として使用することにする.
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Causes of Carryover |
消耗品の支出が当初計画よりも低額であったことと宇治島への本計画による渡島回数が1回であったことによる.後者については,2014年11月に計画した宇治島への2回目の渡島が当日の海況の悪化により実施できず,その後も数回の渡島計画を立てたが、いずれも悪天候のために実現できなかった.なお,2015年3月26日にスケジュールに空きができ天候も良かったことから、急遽宇治島渡島を実施した.本来は本計画から経費を支出するべきであるが,年度末の締めの手続きを終えていたために,本計画からの支出は行わなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本計画は無人島での観測研究であるために,想定外のトラブル発生の可能性もありうる.今年度の未使用額は,そのような場合の渡島費用および保守のための消耗品に充てる.なお,観測が順調に実施できた場合には未使用額はさらに次々年度に使用することとする.この場合には,当初計画の最終年度での渡島回数を1回から2回に増やすことができ,観測継続期間を延ばせた分だけ有用なデータを蓄積できることになる.
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