2013 Fiscal Year Research-status Report
ラージエディ・シミュレーションによる前線の乱流構造の研究
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24540465
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川島 正行 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (10281833)
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Keywords | 前線 / ラージ・エディ・シミュレーション / 乱流 / 降雨帯 |
Research Abstract |
平成25年度は前年度構築したラージ・エディ・シミュレーション(LES)による前線の実験設定をもとに以下の感度実験を行った。 1)前線強化の変化に対する前線構造の感度実験 傾圧不安定に伴うシア変形による南北温度傾度の差分移流による前線強化の変化に対し、寒冷前線の前線層の幅や前線層における乱流構造、寒冷前線先端部の形状などがどのように変化するか、感度実験により調べた。その結果、前線強化が強まるにつれ前線層の幅は小さくなったが、ある閾値を超えると強いシアに起因した二次元的な組織的乱流構造が生じ、結果として平均的な前線層の幅が増大することが示された。また、組織的乱流構造に起因した波状の降水パターンが形成されることを示した。 2) 暖域下層の組織的大規模乱流構造の影響に関する感度実験 寒冷前線の前方暖域には鉛直シアの影響を受けて生じたロール状の大規模乱流構造があり、前線の構造や降水に影響を及ぼす可能性が指摘されている。そこで、地表面摩擦係数を変えて摩擦に起因した鉛直シアを変えることでロール状の乱流構造がある場合とない場合を再現し、ロール状の乱流構造が、地上付近の寒冷前線の構造に与える影響について調べた。その結果、前線先端の水平シアが弱い場合は、ロール状の乱流構造が地上寒冷前線における収束に規則的な波状のパターンを作り、結果としてロール状の乱流構造と同じ波長の降水パターンが形成されることが分かった。一方、前線先端の水平シアが十分大きくなると、降水のパターン形成においては前線先端における水平シア不安定の影響が卓越することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験はほぼ遂行できており、前線に伴う擾乱について、過去の観測例とも整合的な結果が得られている。また、前線強化などのパラメータに対する乱流構造の変化など、興味深い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
将来的には数値予報においても大規模な乱流を陽に表現するLESが用いられることが望ましいが、当面はは計算負荷の少ない、より格子の粗い非静力学モデルが数値予報に使われると考えられる。今後は、LESを用いた基礎的な感度実験を行いつつ、LESの結果と非静力デルの実験結果を比較することで、雲解像モデルの乱流パラメタリゼーションの改良・開発も視野に入れて研究を推進する予定である。
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Research Products
(2 results)