2013 Fiscal Year Research-status Report
近年頻発する局地的豪雪の実態解明と準リアルタイム解析システムの構築
Project/Area Number |
24540470
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
本田 明治 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20371742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河島 克久 新潟大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40377205)
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Keywords | 豪雪 / 大雪 / 気象 / 寒気 / 降雪 / 日本海 / データ / 風向風速計 |
Research Abstract |
2005/06年の豪雪以降、日本各地はしばしば局地的な大雪に見舞われている。2013/14年冬は北海道・北陸・日本海側沿岸部を中心に少雪傾向となったが、太平洋側沿岸を南岸低気圧がしばしば通過し関東甲信地方を中心に記録的な大雪となった。本研究では、このような近年の冬の降雪特性について、ユーラシア大陸での寒気の形成、日本海上で寒気の変質と雪雲の形成及び組織化、局地的な豪雪をもたらすメカニズムを明らかにするため2つの課題を設定しているが、今冬の太平洋側の大雪も対象に含めることとする。課題1「近年の局地的豪雪の実態と、日本海上寒気変質過程の解明」では、ここ数年の大雪事例に着目しその実態と降雪特性をの理解を通じて、豪雪発生のメカニズムを解明する。また、課題2「豪雪事例の準リアルタイム解析システムの構築と試験運用」では、多機関が提供する気象関連データを準リアルタイム収集、データベース化して解析するデータ統合処理システムを構築する。 課題1について、2005/06年~13/14年まで今冬分を追加した9冬について、更に気象庁アメダス降雪深データ(日合計値)・高層気象データを用いて、気象特性と降雪分布特性の関係を詳細に調べている。課題2では、構築された新潟市気象観測網データ(風、降水)のオンラインデータ収集・解析システムに、新潟大学で設置した気象レーダー、市内展開中の風向風速観測点のデータの準リアルタイムでデータ収集を開始した。研究室の計算機環境については、数値実験用にカスタマイズした専用PCを購入し、UNIX環境を構築、米国NOAAメソ気象モデルを実装し数値実験を進めている。新潟大学災害・復興科学研究所では新潟県内320地点の積雪深をリアルタイムで収集、ウェブサイトに表示するシステムの運用をこの冬から開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1について、近年の降雪分布特性について、2005/06年以降の9冬季分実施できたため、より詳細な降雪分布特性を明らかにすることができた。25年度は降雪分布特性と大気循環場の関係について、更に気象庁アメダス降雪深データ(日合計値)・高層気象データ及び再解析データJRA-25(6時間値)に基づいて気象特性と降雪分布特性の関係を詳細に調べたところ、日本北部(秋田、札幌)の高層気温と全国の総降雪量との間の有意な関係に加え、上空気温観測点の周辺より南西側観測点の降雪深と関係が深いことが明らかとなった。降雪(降水)分布にかかわる地形的要因については、日本海沿岸部でも特に降雪の少ない越後平野の新潟市域周辺に着目し、沖合に浮かぶ佐渡島の影響を調べたところ、佐渡島上空で平年より気温が低く、更に上空の北西風が平年より強い場合に地形効果が明瞭で、風下の新潟市域では降水量が3割程度減少する一方周辺部では1-2割の降水量の増加が認められた。 課題2について 平成24年6月より運用を開始している新潟地域リアルタイム風情報システムを安定して運用している。新潟大学気象レーダーデータのオンライン取り込みにも成功し、26年度初頭には公開見込みである。また新潟大学で市内に展開中の気象観測点はこれまで1地点運用しているが、26年度早々に2地点設置・観測開始の見込みである。この3観測点のシステムは、気象レーダーの観測間隔10秒に合わせ、10秒毎の風向・風速データをリアルタイムで送信できる仕様としている。また新潟大学災害・復興科学研究所で運用する新潟県内準リアルタイム積雪分布表示システムのデータを用いた解析システムの準備も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度初頭には必要な研究基盤は整い、25年度中にはデータ収集解析システムが整備され、実装した数値モデルを用いた数値実験も順調に進めている段階である。26年度はこの体制の中で、2013/14年冬の関東甲信地方を中心とした大雪事例も解析対象として含め、日本各地の局地的豪雪の実態と日本海上の寒気変質課程を中心に太平洋上の気団変質過程も明らかにし、豪雪の外的要因を突きとめていく。課題1では、特に米国NOAAのメソ気象モデル用いて大雪事例再現実験を実施、更に海面水温分布の可変、非断熱過程のオンオフなどによる感度実験を実施し、各事例に降雪動態を決定する因子を特定していく。比較実験として気象庁の非静力学メソ気象モデルの導入準備を進めている。更に、日本における降雪動態の変化を定量的に予測するシステムの構築にむけては、この冬の関東甲信地方の大雪にはブロッキング高気圧の役割が重要視されていることから半球スケールの大気循環場変動の監視を強化し、ユーラシア大陸上の寒気蓄積の動向、地表面環境、日本海の海況などを総合的に監視する体制を整えていく。 課題2に関しては、整備されたオンラインデータ収集・データ統合処理解析システム上で、大量のデータ処理が必要な数値モデルがスムーズに運用できるより高スペックのシステムを目指す。また当システムに、海面水温データ及び気象解析値(気象コンソーシアム提供)を同時に取り込み、課題1の数値実験をスムーズに実施できる環境を整備し、大雪事例発現時に準リアルタイムで事例解析が可能なシステムとする。最終年度の仕上げとして、38豪雪・56豪雪など過去の豪雪事例や太平洋側に大雪をもたらした事例の解析を通じて、特徴的な降雪事例の詳細を明らかにし、局地的豪雪発生の予測精度の向上に寄与する「寒気」の指標化、寒気変質過程の定量化、気団変質に伴う「降雪総量」など定量的指標を導入を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度中に設置予定であった3番目の気象観測点の無線通信システムの設置費用の執行が遅れているためである。 次年度への繰り越し使用額(B-A)は約62万円は、25年度中に設置予定であった気象観測点の無線通信システムの設置費用約50万円、電気工事約10万円を見積もっており、年度初めに執行予定である。また数値実験用PCの性能向上・処理容量増強のための増設メモリ及び増設デスクに約10万円を予定している。成果発表の旅費約15万円、論文投稿料に約20万円、その他経費に約5万円を見込んでいる。
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Research Products
(8 results)