2012 Fiscal Year Research-status Report
磁気圏尾部ダイナミクスに対するプラズマ波動のエネルギー散逸への寄与の評価
Project/Area Number |
24540483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
篠原 育 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (20301723)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙プラズマ / 磁気リコネクション / プラズマ波動 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、磁気圏尾部のプラズマ波動と磁気圏尾部のダイナミクスの関連を調べることによって、プラズマ波動によるエネルギー散逸効果が磁気圏尾部のダイナミクスにどのようにカップルしているのか(/いないのか)を明らかにすることである。具体的には、磁気リコネクション等の現象に着目してプラズマ波動のアクティビティーとの因果関係を調べ、ダイナミクスとプラズマ波動のカップリングの物理を明らかにする。平成24年度は、磁気リコネクション領域におけるプラズマ波動の解析を行い、リコネクション領域内のプラズマ波動の空間構造とそれによるエネルギー散逸を評価することを計画していた。GEOTAIL衛星の約20年間の磁気圏尾部の観測データより、約50例の磁気リコネクション・イベントを集め、プラズマ波動のデータの解析を行った。 約50例の解析からは、磁気圏尾部の朝夕方向の位置によって、その様相は大きく異なり、磁気圏尾部におけるリコネクション領域の3次元的な構造を反映していることが明らかになった。この内、磁気リコネクションの中心部と思われる、最もプラズマの加熱/加速がおこり、電子とイオンの運動差が顕著に見える4例を詳細に解析したところ、①電子とイオンの運動差が顕著に見える領域(ion-electron decoupling 領域)内で強度の強い低周波の静電波動が共通して観測されること、②しかし、まさに磁気中性線近傍ではプラズマ波動の強度は弱いこと、が確認された。申請時の予想通り、プラズマ波動の観点でも、無衝突リコネクションによる描像とよく合うことを複数の観測事例について確認できた。一方、ion-electron decoupling 領域と強い静電波の観測される領域は非常によい対応がとれることも明らかになり、リコネクション下流領域の高速電子流の散逸との関係が強く示唆されることが解った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の当初の研究計画は、「リコネクション領域におけるプラズマ波動の解析を行い、観測データ解析を実施し、リコネクション領域内のプラズマ波動の空間構造とそれによるエネルギー散逸を評価する。」ということで、実績の概要に記載したように、概ね当初予定していたデータ解析作業とエネルギー散逸への寄与の評価を行うことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究の成果から、磁気圏尾部内におけるリコネクション領域の3次元構造が明らかになってきたことで、プラズマ波動のアクティビティーの空間分布に、これまで想定していた以上に、リコネクション領域の空間構造との対応がとれそうなことが明らかになった。そこで、平成25年度は、当初の予定を修正して、引き続き磁気リコネクション領域の3次元構造の中におけるプラズマ波動の役割を評価していきたい。具体的には、リコネクション領域の中心部から朝夕方向にはなれるほど、運動論的効果が薄くなることが解っているが、それによってプラズマ波動のアクティビティーが対応して弱くなるのかどうか、等、リコネクション領域全体の中にプラズマ波動のアクティビティーをマッピングすると共に、プラズマ波動によるエネルギー散逸量の空間分布を見積もり、従来の数値シミュレーションから提唱されている無衝突リコネクションとの比較を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使途については、ほぼ平成24年度と同様に、数値シミュレーションで生成された解析用データ保存用の磁気ディスクアレイ装置(約50万円)、および、研究成果を国内外の研究会・学会にて発表するための旅費(約40万円)を予定している。
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