2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540485
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
藤本 光一郎 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (80181395)
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Keywords | 断層物質 / 地震 / 中央構造線 / 粘土鉱物 |
Research Abstract |
本研究では天然の断層物質の解析と粘土鉱物の粉砕実験などを通じて,断層帯の微粒子の産状やその形成過程などを明らかにすることを目的としている. 1.天然の断層物質の解析:野島断層周辺の粒度解析を系統的に実施し,破砕の程度の指標とされるフラクタル次元が2以上と特徴的な値を示す深度はコア観察における岩相の記載及び深度とよく一致した.また,破砕エネルギーとフラクタル次元の間には強い相関が見られ,地震活動の累積に伴いフラクタル次元もべき乗則に従って増加する可能性が示唆された.さらに,三重県内の中央構造線を対象として,未記載の三峰山南方の露頭を調査するとともに,飯高赤穂の断層を貫く坑井の下盤側の解析を進めた.三峰山の露頭については下盤の三波川変成岩と上盤の領家帯との物質境界に固結したウルトラカタクレーサイト帯を確認する一方,より下盤側強く破砕した断層ガウジ帯が認められた.また,上盤側の領家帯では厚さが1-2mの粘土化が著しいカタクレーサイト帯が認められた.これは飯高赤穂の中央構造線を貫く坑井と似た特徴である.一方,飯高赤穂の坑井での下盤の三波川帯では,断層近傍でスメクタイトや沸石などの熱水変質鉱物が認められたほか,方解石をはじめアンケライト,シデライト,マグネサイト,ドロマイトなど鉄マグネシウムに富む多種の炭酸塩鉱物が出現することが特徴的であった.これらは断層帯の流体の性状などを考察する上で重要な情報を与える. 2.粘土鉱物のメカノケミカルな変化 含水条件で合成サポナイトの粉砕実験を行い,昨年度までの乾式条件での実験と比較した.サポナイトは湿式条件では長時間粉砕しても非晶質化が進まなかった.これは層間の水が潤滑剤としての役割を果たすとともに,層間の膨潤によって分散系を作ることが原因と考えられる.水の有無によってスメクタイト系の鉱物を含む断層の挙動が大きく影響を受ける可能性がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天然の断層物質解析については,粒度分析については計画通りに進み,手法を確立して野島断層に適用することができた.また中央構造線についてもほぼ計画通りに進んでいる. 粘土鉱物の粉砕実験についても,ほぼ計画どおりに進み,粘土鉱物に水を加えることで非晶質化しにくくなることが明らかになった.一方,実験と実際の断層活動との関連付けについては,まだ検討がそれほど進んでいない状況である. 実験系については,関連する論文を出すことができたが,天然物質系についてはまだ中途の状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
天然の断層物質の解析については,鉱物の産状を中心に解析を進める. 実験については,層間水を含むスメクタイト系の鉱物を中心に,含水量などを変えて天然の断層の含水条件に近づけるとともに,実験後の粉砕物の観察を進めて天然の断層物質との対比ができるよう解析を行う. 最終年度なので,実験と天然断層物質解析の統合を進めるとともに,論文執筆も行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消費税が上がったこともあり,最終年度に通常の研究経費に加えて論文校閲費などが必要となるために若干の経費を残した. 主として英文校閲費に使用する見込み.
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Research Products
(6 results)