2012 Fiscal Year Research-status Report
日本海底コアの有機炭素・窒素量変動に基づく更新世後期の高精度古気候解析
Project/Area Number |
24540488
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
公文 富士夫 信州大学, 理学部, 教授 (60161717)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本海 / MD01-2407 / MD01-2408 / 隠岐堆 / 気候変動 / 有機炭素量 / 生物生産性 / 極前線 |
Research Abstract |
日本海,上越沖で採取したコア試料についての分析を補足し,2つのコア試料について約10万年前までの有機炭素量(TOC),窒素量(TN)の変動を高時間分解能で解明した.その結果を北大西洋域の気候変動(グリーンランド氷床の酸素同位体比)と比較したところ,軌道要素の周期のみならず,数百年~数千年周期の変動(D-O cycle)のレベルでも強い同調性が確認された.このテレコネクションが生じるメカニズム(極前線の同調した南北変動)を考察し,Asian Journal of Earth Science誌へ投稿した.査読の結果を受けて,修正・再投稿を行ったところであり,間もなく受理される見込みである. IMAGES VII-WEPAMA Leg 2で採取された2つのコア試料(MD01-2407.2408)については,それらを同志社大学と高知コアセンターから信大へ運び,1cmごとに乾燥処理を行い,TOC,TN分析の準備を完了した.さらに,MD01-2407コア試料については,全長56mの内,4分の3程度の範囲についてTOC, TN分析を終えた.ただし,今のところ分析は1cmおきであり,コア深度で24~36m分が未完である.上部から連続的に分析が進んだ期間(現在~30万年前)については,おおむね次のような特徴が明らかになった.1)短期~長期の周期性が組み合わさったTOC,TNの顕著な変動が30万年間にわたって存在すること,2)上越沖コアと年代が重なる部分においては非常によく似た変動が確認できること,3)16~30万年前についてはこれまでにない高時間分解能での環境変動の資料が得られたこと,4)低海水準期と高海水準期でTOC変動を駆動する要因が異なる可能性があること.北半球を代表する高精度の古気候資料となる可能性もあり,研究成果の意義は大きい.間を分析して,次の論文の投稿を準備中.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
日本海上越沖で採取したコア試料についての分析は完了し,日本海の堆積物における有機炭素量の経年変動がグリーランド氷床の酸素同位体比と非常によく対応することを学術誌に投稿した.査読によっていくつかの修正の必要性が提示されたが,課題はほぼ解決できており,受理の見通しがたった(再投稿済み). その研究過程で発想した第四紀中・後期の長期間にわたる有機炭素量変動の解明という目標は,1)2つの長いコア試料を確保し,1cmごとの分取と乾燥作業(約1万個の作業)がすでに終わっていること,2)約60万年間というより長い時間をカバーする隠岐堆のコア試料(MD01-2407)の分析が4分の3以上終了していること,3)これまでの分析結果は当初の予想を裏付けてこと,などから,極東アジアにおける古気候指標の確立に一歩前進していると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
2つのコア試料のTOC,TN分析を進め,複数コアの統合によって,信頼性の高い過去50~60万年間のTOC変動を明らかにする.また,生物生産性の指標と考えられるTOCがどの様なメカニズムで気候の変動と結びついているのか,特に極前線の南北移動(位置と期間の変動)がどのようなプロセスで,日本海の生物生産性をコントロールできるのか,という点での仕組みの解明を,海洋学者の協力も得ながら進めていく. 具体的には,MD01-2407コア試料については残った部分の分析を行うとともに,変動の激しい期間については補完の分析を行って時間分解能を上げる.MD01-2408コア(秋田沖)のTOC, TN分析を当面3cmおきに進める.それらの結果と成果を学会で発表するとともに,学術誌への投稿を行う(今年度の目標は2本).
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き,隠岐堆と秋田沖の堆積物試料のTOC,TN分析を継続する.合計で約2500試料 (隠岐堆コアの残 1000試料;秋田沖コア 1500試料)を想定している.分析材料には錫箔,還元銅,酸化銅,スクリュー管瓶が必要で,また,運転にはキャリアーとしてのヘリウムガスが欠かせない.分析作業を効率的に進めるために実験補助者が不可欠で,謝金の支払いが必要となる.研究成果は学会に参加して口頭/ポスターなどで発表する(国内3件,国際学会1件を予定している).また,学会誌への論文投稿を予定しており.事前の英文校閲(校閲の経費)をへて,投稿する(投稿料).
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Research Products
(10 results)