2014 Fiscal Year Research-status Report
遠洋深海底での顕生代初期における生物多様性の爆発的増大に関する研究
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24540496
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
角和 善隆 明治大学, 研究・知財戦略機構, 教授 (70124667)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生痕化石 / 放散虫チャート / 遠洋深海 / 底生生物の進化 / 海洋環境の変動 / カザフスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
約5億年前から4億5千万年前の、カンブリア紀後期からオルドビス紀における遠洋深海底に生息する底生生物の進化と海洋環境の変遷を検討する目的で、カザフスタン南部、バルハシ湖南西部に位置するブルバイタル周辺に露出する放散虫チャートの産状観察と試料の採取を予定通りおこなった。観察はTolmacheva et al. (2001; 2004)で生層序が検討された2カ所の露頭に限定した。 1 Loc. 89101のカンブリア紀後期のチャートは約35mで、灰白色でわずかに赤色部を伴う。露頭中部のオルドビス紀に入ると主に赤色チャートからなるが、上部では再び灰白色チャートが主として、赤色チャートを挟む。両者の漸移部では黒色から暗灰色チャートを伴う灰白色チャートからなる。露頭レベルでは灰白色、暗灰色、赤色を問わず全体に微細平行葉理が発達し、明確な生痕化石は観察出来なかった。 2 Loc. 9706では約70mの層を詳細に観察した。暗色系を主とし赤色、灰白色、暗灰色など色の変化の激しい下半部と、安定して赤色チャートが続く上半部に分けられる。時代的にはTremadocianからDarriwilianの後期に相当する。下半部の暗色系が卓越する部分は、Loc. 89101において上部の暗灰色層を伴い灰白色系が発達する部分にほぼ時代的に対比でき、この地域の海洋底では酸化還元環境の一時的変化があったことを示す。上半部の赤色チャートが発達する部分には、主にチャート角礫からなる細粒から粗粒の砂層や砂質葉理が約20mの間に10層準見つかった。 Tolmacheva et al. (2001)が記述していたDarriwilian付近の「生痕化石」は、明確な生痕化石と考えられるtubeやtunnelが見つかった。ただし続成作用によると思われる構造も共存し、今後慎重に室内観察によって検討し両者を区分する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査: 2012年度および2013年度に検討したオーストラリア、カナダにおけるものとほぼ同時代の放散虫チャートを観察し、オーストラリアやカナダでは灰色を主とし、カザフスタンでは赤色を主とするという異なった色調、すなわち異なった環境の大洋に関するデータの取得できた。そして、底層に酸素が十分あり大型の底生生物が生息し得るはずの環境でも、カンブリア紀後期では微細葉理が発達して大型の底生生物がいなかったことが明らかになった。一方、オルドビス紀中期のDarriwilianには赤色チャートに改めて確かな生痕化石が確認でき、これは種類こそ異なるがオーストラリアやカナダと同様である。ただし、生痕化石の形態は必ずしも共通ではない。このように野外調査において大きな方向性が確認できたことは、達成度として100%を超える。 室内観察:大学を移動し、新たな研究場所における岩石処理のシステムが十分に確立できていないため、室内での詳細な観察は必ずしも満足に行うことはできなかった。そのため成果の達成度は60%程度である。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の野外調査は順調に進行したが、試料の観察は必ずしも進んでいないので、2013年度採取したカナダの試料とともに残りについて詳細に観察を行う。そして、2012年度から2014年度の3年間で予定していた野外調査は終了したので、2012年度に調査したオーストラリアの結果を含め順次結果を公表する。そして3ヶ所の結果を総合して、カンブリア紀後期からオルドビス紀後期にかけての遠洋深海底の環境変動と底生生物の侵入の経過を議論し、公表する予定である。
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