2012 Fiscal Year Research-status Report
日本海拡大と表層環境変動:急激な地殻変動下における島弧古生態系復元の試み
Project/Area Number |
24540498
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
奈良 正和 高知大学, 教育研究部自然科学系, 准教授 (90314947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古生態 |
Research Abstract |
高知県土佐清水市に分布する下部-中部中新統三崎層群(西南日本弧前弧海盆堆積物)においてあらためて野外調査を行い,各種の未固結変形構造やイベント堆積物を観察し,それらの成因について考察を行った.その結果,いくつかの層準で地震イベントや津波イベントを示唆する堆積物をあらたに見出した.このことから,三崎層群の再調査の必要性も認識されたため,同層群最上部の竜串層を中心に既存データよりも高い精度での地質柱状図等の作成を行った. 愛知県南知多町に分布する中新統師崎層群において,先行研究により報告された津波イベント堆積物をはじめとした地層群を観察し,西南日本弧前弧域の漸深海帯における堆積作用と底生群集の復元を試みた.そして,こうした場における津波イベント堆積物ならびに静穏時堆積物の堆積相上の特徴を確認したほか,これらの堆積物における生痕化石群集の相違点についても観察を行い,基礎的データを得た. また,カナダで開催された生痕学の国際会議 (ICHNIA 2012) に参加し,本研究課題を遂行する上で重要な,前期中新世における北西太平洋域の大陸縁辺堆積物(野柳砂岩部層)での調査結果について1件のポスター講演を行ったほか,第四紀の海流サンドリッジの古生物群集復元に関する1件の口頭講演をおこなった.他にも,上記の三崎層群ならびに四国山地西部に分布する久万層群を対象とした西南日本弧前弧域の海域から陸域における堆積環境ならびに古生態系の復元例等に関する3件の国内学会講演を行った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までのところ,高知県の三崎層群の再検討や愛知県の師崎層群の検討が進行中であり,多くの有用なデータが集まりつつある.加えて,生痕学に関する国際会議 (ICHNIA 2012) のほか,日本地質学会や日本古生物学会の年次大会において,本研究の完遂へ向けた”所信表明”とも言える予察的講演をおこない,参加者と議論を交わしている.その結果,これらの講演に関しては,概ね好評を博していることが伝わってきたので,今後も当初の計画に沿った研究を続けていきたい.達成度は,総じて順調といえるが,夏期休業中に国際会議が開かれたほか,通常業務のタイミングの問題もあり,長期での野外調査に時間を割くことが予想外に難しかったため,想定の範囲内ではあるが一部に遅れが生じている.ところで,筆者は,本研究課題の根幹をなす地層と生痕化石の解析にもとづく古生態復元の研究によって,日本古生物学会から学術賞を授与された(平成24年6月29日付).この事実も本研究が客観的に良好な評価を受けていることの傍証となろう.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,四国内の三崎層群や久万層群,愛知県の師崎層群そして和歌山県の田辺層群といった西南日本弧前孤域の堆積物だけでなく,中国地方の成相寺層や古浦層といった背弧域の下部-中部中新統にも観察対象を広げていきたい.また,こうした西南日本弧の堆積物だけでなく,比較対象としての大陸縁辺堆積物である台湾の下部中新統についても観察を進めたい.なぜなら,台湾中新統は予察的研究により大まかな特徴を確認できていることに加え,筆者と長期にわたって同地層群の共同研究を続けてきたLoewemark博士が,最近,国立台湾大学に赴任したこともあり,調査が大幅にしやすくなったためである. さらに,本研究課題は,その独創性ゆえ,国内で関連する研究者の数がきわめて限られている.したがって,今まで通り,国際的な研究集会にも積極的に参加し,研究内容のbrush upにつとめていきたい.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし.
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