2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540507
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
黒澤 正紀 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50272141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
安間 了 筑波大学, 生命環境系, 講師 (70311595)
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Keywords | 流体包有物 / 微量元素 / 花崗岩 / 丹沢 / PIXE |
Research Abstract |
平成25年度も、引き続き丹沢複合岩体のユーシン岩体内部の流体組成を明らかにするため、玄倉川流域の花崗岩中の晶洞試料を中心に検討した。晶洞は花崗岩固結の際に放出された流体が岩体上部に集積して形成されたもので、花崗岩固結時の熱水流体の情報を持つ。晶洞の自形石英には5種類の流体包有物が含まれていた。主要な包有物は2相包有物と多相包有物で、多相包有物には複数の等方性結晶と少量の異方性結晶・不透明鉱物が含まれる。多相包有物と気相包有物が共生している例も多く、流体の沸騰による形成が考えられる。多相包有物の均質化温度は約400~500℃、塩濃度は約40wt%であった。2相包有物の均質化温度は約220~500℃であった。他に、液相に富む液相包有物、微少な液体CO2包有物も少量存在した。 今回は主要な包有物である、多相包有物と2相包有物の微量元素組成を粒子線励起X線分析法(PIXE)で分析した。その結果、晶洞の多相包有物は、他の新第三紀花崗岩(甲府および対馬岩体)の晶洞の多相包有物に比べ、Cu・Ti・Mnの濃度が高く、Sr・Geが著しく低かった。Br/Cl比(重量比)はほぼ0.0030で、新第三紀花崗岩のものとほぼ同程度であった。一方、2相包有物は新第三紀花崗岩の晶洞の2相包有物とは大きく異なる特徴を示し、Cu・Ti・Fe濃度が非常に高く、Ge・Rb・Sr・Pbを殆ど含まなかった。ZnよりもCu 濃度が高いことも目立つ特徴である。Br/Cl比も0.0010以下の低い値であった。多相包有物と2相包有物の高いCu濃度は晶洞での黄銅鉱の存在や晶洞付近の小規模な熱水性の銅・鉄鉱床の存在と調和的であるが、丹沢花崗岩体周辺に大規模な銅鉱床は存在しない。発生した熱水流体の量が少ないか、流体からの金属の集中的な沈積を促す環境が乏しかったことと関連している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の野外調査は実施できなかったが、PIXE分析によりM-type花崗岩起源の熱水流体の化学的特徴の一端が明瞭になってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
採取済み試料は粒子線励起X線分析法(PIXE)による分析を進めると共に、丹沢山地東部のユーシン岩体の補足調査・研究を進める予定である。周辺に小規模の銅鉄鉱山が確認されたのでその試料も分析を行う。また、比較的均質化温度が高いとされる畦ヶ丸岩体の中川川流域の調査と試料採取も行う。試料採取は晶洞及び石英脈など形成ステージの明確なものを対象とする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究時間の都合で中川川流域の岩石試料採取を実施できなかったため、旅費相当分に残額が生じた。 今年度は岩体東部と中川川流域の野外調査を実施する予定である。
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Research Products
(4 results)