2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒスイ生成の謎に迫る:ストロンチウム・バリウム含有鉱物の合成実験からのアプローチ
Project/Area Number |
24540510
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下林 典正 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70235688)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 変成岩 / ヒスイ輝石 / 翡翠 / 鉱物共生 / 合成実験 / ストロンチウム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒスイ輝石を主要な構成鉱物とするヒスイ輝石岩(通称“翡翠”)には、相応な量の石英が含まれていないことが多く、必ずしも全ての“翡翠”が高圧低温変成作用の指標である「アルバイト→ヒスイ輝石+石英」の反応を経て生成したとは考えにくい。そこで、“翡翠”中のヒスイ輝石と共生する鉱物の中からキーとなる鉱物を特定して、その鉱物の安定条件や共存関係から“翡翠”の生成環境を絞り込むことが本研究の目的であった。そのために特に、各地のヒスイ輝石岩および関連岩(アルビタイトやロディン岩など)中のSrやBaを含有する鉱物種を主なターゲットとしてきた。 本年度は新潟県糸魚川地域(長野県の栂池地域も含む)だけでなく、兵庫県の大屋地域や九州の長崎地域・肥後地域のヒスイ試料も取り扱った(ただし、後二者はいずれもヒスイ輝石を含むものの“翡翠”とは言えず、石英の共存が確認されたことから、対象からは外した)。糸魚川地域の“翡翠”の中からSrに富む「糸魚川石」や「松原石」を含むものを入手できたので研究試料とした。また、新たな栂池産の脈状ヒスイのサンプルを入手したので昨年度に引き続き観察・分析を行ったが、脈状ヒスイ部からはSrやBaに富む鉱物種は見出せなかった。また、大屋産の“翡翠”からはSrを含むストロナルシ石が報告されているが(宮島 他,2000)、今回採集した試料からは見出せなかった。これらのことから、「糸魚川石」の組成variation(すなわち、Sr/Ca比)と温度-圧力条件が鍵になると考え、合成実験のターゲットとした。 ただ、合成実験に関しては、当初の計画から大幅に遅れが生じており、最終年度の26年度以内に終えることができなかったため、補助事業期間延長承認申請書を提出して27年度までの延長の承認を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現地調査に基づいて天然の産状を調べることに偏重し過ぎた感がある。その結果として、副産物としては世界で2例目の「千葉石」(天然ガスを含むシリカ鉱物)の報告といった成果が上がったり、“翡翠”生成の謎を解くキーとなる共生鉱物の一つとして「糸魚川石」を特定したといった進展はあったものの、肝心の合成実験に関しては完全に遅れを取っている。 合成実験に関しては、当初の実施計画書記載の水熱装置のグレードアップを断念した後に、サファイアアンビル装置の導入・改良、ピストンシリンダー型高圧装置による予備実験など、いまだ試行錯誤の状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度末に補助事業期間延長承認申請書を提出して延長の承認を受け、最終年度となった27年度には合成実験を中心に計画を遂行していく所存である。これまでの天然試料の詳細な観察・分析から、キーとなる共生鉱物を「糸魚川石」に絞り込んでいる。「糸魚川石」は、ローソン石のCaをSrに置き換えた組成をもつ鉱物であるが、これまでの申請者の観察・分析によって、糸魚川地域の「糸魚川石」のSr/(Sr+Ca)比が~0.9以上と高いのに対して、鳥取県の若桜地域の「糸魚川石」は0.8~0.5と低いことがわかっている。本年度は、研究協力を仰いでいる京都大学大学院人間・環境学研究科の小木曽研究室に設置してあるピストンシリンダー型高圧装置を使用させていただき、温度や圧力とともにSr/(Sr+Ca)比を変えながら「糸魚川石」あるいはローソン石の合成実験を行い、その固溶体関係や安定条件を検証しようと考えている。
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Causes of Carryover |
平成26年秋までに合成実験を完了する予定であったが、実験温度が低温であったために期待していたほど反応が進まず、予想していた以上の長時間のランが必要となった。そのため、合成実験の計画に遅れが生じ、それに付随して未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成実験に必要な消耗品は大半は前年度に購入して準備済みであるが、合成物を回収後の観察・分析のための機器の消耗品費が必要となる。また、研究協力先のフォッサマグナミュージアム(新潟県糸魚川市)の宮島宏氏らと研究の取り纏めについて意見交換・議論をするために国内旅費が必要である。未使用額はそれらの経費に充当させるつもりである。
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[Journal Article] Adachiite, a Si-poor member of the tourmaline supergroup from Kiura mine, Oita Prefecture, Japan2014
Author(s)
Nishio-Hamane, D., Minakawa, T., Yamaura, J., Ohnishi, M. and Shimobayashi, N.
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Journal Title
Journal of Mineralogical and Petrological Sciences
Volume: 109
Pages: 74-78
DOI
Peer Reviewed
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