2012 Fiscal Year Research-status Report
超高圧高温X線回折実験に基づくフェロペリクレイス内の鉄イオンのスピン転移の解明
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24540520
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
松井 正典 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (90125097)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 祐司 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (10423435)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射光実験 / スピン転移 / 超音波測定 / フェロペリクレイス / 超高圧高温 / 地球内部 |
Research Abstract |
高圧下における超音波測定を行うための(Fe0.2Mg0.8)O焼結体を高温高圧下で合成すべく、合成の際の温度圧力条件、高圧セル内の試料の最適化等を試みた。条件を変えていくつか実験を繰り返した結果、次に述べる方法で良質の焼結体を合成することに成功した。まず、先に作成した(Fe0.2Mg0.8)O粉末を更に細粒にすりつぶした後に、試料を鉄箔(10μm)に封入し、USSA5000一軸プレス(岡山大学地球物質科学研究センター)を用いて、温度1300 K、圧力10 GPaで2時間保持し、焼結した。更に、10時間かけて温度圧力を徐々に減じ、常温常圧下で試料を回収した。その後、得られた焼結体を、超音波測定を行うために、超音波加工機M60(岡山大学地球物質科学研究センター)を用いて、直径1mm、長さ1mmの円柱形に整形した。 続いて得られた(Fe0.2Mg0.8)O焼結体を試料として、放射光X線とマルチアンビル装置を組み合わせた弾性波速度測定実験を行った。従来の超音波測定高圧実験では、第二段アンビル材として超硬WC合金を使用するが、その場合発生圧力は最大約30 GPaである。本実験ではスピン転移が生じる下部マントル内の圧力発生(40-60GPa)を実現するために、超音波実験では、世界で初めて、焼結ダイヤモンドをアンビル材として使用した。超音波測定システムの開発、高圧セルの種々最適化の結果、低圧下での弾性波速度データの取得には成功したが、高圧下での試料変形や超高圧発生に課題を残している。今後高圧セルの更なる最適化を行い目標とする発生圧力60GPaを達成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いた、放射光高圧実験により室温下、圧力100 GPa以上において、マントル物質についてのブリリアン散乱による弾性波速度測定の結果が報告されている。しかしながらこのようなDACを用いたブリリアン散乱実験は、従来室温に限られており、高温における測定が一般に極めて困難である。下部マントル内における鉄イオンのスピン転移の挙動を詳細に解析するためには、超高圧下における実験試料についての微細な温度コントロールと精密な温度測定が必須であり、故にDACを用いた実験には明らかに限界がある。このような状況のもと、超高圧高温での実験における温度制御・測定において、格段に信頼性が高く且つ、高精度な体積(密度)測定、超音波速度測定が可能な、焼結ダイヤモンドをアンビル材として使用した川井式マルチアンビル高圧装置を用いた放射光実験が必要である。 このような認識のもと本実験を計画したが、実験の最大の懸案である、焼結ダイヤモンドを使用した超音波実験については既に(世界で初めて)成功している。また、焼結体合成が非常に困難な(Fe0.2Mg0.8)Oの良質な試料作製にも成功しており、超音波速度測定の準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で行う、超高圧領域(圧力40 GPa以上)でのマルチアンビル高圧装置を用いた放射光超音波測定実験は、従来研究例の全くない最先端の分野で、現在まさに開発途上の極めて重要な分野と考えている。故に、高圧力セルの更なる最適化、超高圧高温装置による放射光超音波実験の技術開発が必須である。(Fe0.2Mg0.8)Oの高スピンから低スピン状態へのスピン転移においては、室温において明らかになったように、中間に混合スピン状態がかなりの圧力幅に渡って存在する。従って、下部マントル内における鉄イオンのスピン転移の挙動を詳細に解析するためには、超高圧下における実験試料についての精密な超音波速度測定が必須であり、故に、放射光超音波実験が不可欠である。本研究では、超高圧発生のための高圧セルの種々最適化が必要であるが、本実験で使用する高圧発生装置(SPEED-MkII)では60GPaを超える圧力発生の研究実績が多くあり、充分実現可能である。今後、実験セルサイズをより小型化し、圧力発生効率を向上させるべく実験を重ねる。本研究を遂行させるためにはSPring-8における放射光実験が欠かせないが、研究分担者(肥後祐司)を代表者として2013A期の実験課題がすでに認められており、今後も継続的な実験が可能である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本実験計画のような30 GPa以上の超高圧高温下での放射光実験では、第2段アンビルとして焼結ダイヤモンド(加工のための費用を加えて、1個250~300千円)の使用が必須である。しかしながら、同焼結ダイヤモンドは、加える圧力が50 GPaを過ぎるあたりから、ブローアウトによりしばしば割れてしまう。1回の実験で計8個のアンビルが使用されるが、ブローアウトによりそれら8個のうちの一部のみが割れる;ブローアウトの焼結ダイヤモンドへのダメージは一般に圧力が高いほど大きく、ブローアウトで割れなかった焼結ダイヤモンドは、再び次の実験で使用可能である。故に消耗品として、焼結ダイヤモンドアンビルが各年3~5個必要である。 放射光実験を行うための出発試料の(Mg,Fe)O焼結体は、岡山大学地球深部科学研究センター内のマルチアンビル装置を用いて超高圧高温下(約10 GPa, 1300 K)で合成するが、その際には第2段アンビルとして超硬合金(WC製)を使用する。1回の実験で8個のアンビルが必要である。その他、高温高圧実験のための、セラミックス圧媒体、加熱材、貴金属類、試薬等の消耗品、加えて、各種データ処理等のためのパーソナルコンピューを購入する。 その他、旅費等に研究費を使用する。
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Research Products
(6 results)