2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540524
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
森 康 北九州市立自然史・歴史博物館, その他部局等, その他 (20359475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 忠男 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (10156127)
池田 剛 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40243852)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 変成岩 / 交代作用 |
Research Abstract |
本研究は、変成岩における反応と変形の連結現象を速度論的に解明することを目的とし、蛇紋岩メランジにおける交代作用を主な対象として反応の進行に伴う岩石と流体の体積変化が岩石の変形に与える影響を考察する。平成24年度には野外調査を重点的に行う予定であったが、後述する健康上の理由により実施できなかった。そこで本研究の準備段階で採集された試料について室内研究(薄片顕微鏡観察、全岩化学組成分析など)を実施した。その結果、以下のような知見を得た。 (1)蛇紋岩メランジ中の泥質変成岩塊の周縁部には曹長岩化が見られる。その部分では石墨の消失が生じているほか、メタンに富む流体包有物が特徴的に含まれる。このことから、蛇紋岩メランジでは石墨からメタンへの転換を伴う交代作用が起きていると考えられる。 (2)この交代作用は、生成される流体層の体積よりも固相の体積減少量の方が大きく、全体として反応促進型延性変形のタイプに属する。ただし間隙流体圧と反応進行度の関係を見ると、初期段階において流体生成による間隙流体圧の上昇が起き、その後に固相の体積減少による間隙流体圧の下降が起きたことが明らかになった。言い替えると、変形のタイプが水圧破砕から反応促進型延性変形へと移り変わったと考えられる。 (3)変形のタイプの変化は、蛇紋岩メランジにおける流体移動に影響する可能性がある。まず水圧破砕が岩石中の空隙を連結して交代作用を促進する。交代作用は固相の体積減少により空隙率を増大し、その結果として変成流体の流路を形成すると考えられる。 現在、得られた結果の検証を行うとともに、平成25年度に学会発表と論文投稿を行う準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年5月に研究代表者である森が重度の十二指腸潰瘍を罹病した。10ヶ月にわたり通院と療養を余儀なくされ、現在も経過観察中である。そのため平成24年度の重点項目としていた野外調査が実施できなかった。代わりに室内研究を中心とした研究を実施して一定の成果を得たが、計画全体に遅れが生じた感は否めない。また、研究分担者にも健康上の障害が生じてディスカッションなど機会をほとんど持てなかったことも進捗に影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
早急に体制を立て直して研究を推進する。具体的には、野外調査の早期の実施、研究分担者との連携強化、学会発表および論文執筆の重点化を行う。 野外調査:長崎県西彼杵半島および野母半島にて踏査を行う。蛇紋岩メランジにおける交代作用を記載し、反応と変形の連結現象の抽出を行う。また、室内研究に用いる試料を採集する。 室内研究:採集試料について、偏光顕微鏡観察、全岩化学組成分析、密度測定、鉱物化学組成分析、流体包有物の顕微ラマン分析などを行う。得られたデータを速度論にもとづいて解析し、反応と変形の連結について議論する。 成果公表:研究成果を論文として国内外の学術雑誌に発表するほか、学会で口頭発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用計画は次のとおり。上記の推進方策のために野外調査に関わる費用を多めに割り振っている。 消耗品費: 320千円(薬品、消耗品、論文別刷など) 国内旅費: 750千円(野外調査、研究打ち合わせ、学会など) 人件費・謝金: 80千円(外国語論文の校閲など) その他: 150千円(野外調査および室内研究などに関わる雑費)
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