2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24540525
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉浦 直治 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80196716)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高畑 直人 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
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Keywords | 初期太陽系 / 年代測定 / エイコンドライト / Mn-Cr / Al-Mg |
Research Abstract |
初期太陽系の歴史を解明するために、消滅核種26Alが太陽系に一様に分布していたことを確認し、初期太陽系の歴史を完成させることが本研究の目的です。26Alの分布の一様性を確かめるためには、(1)ほかの年代測定系(たとえばMn-Cr系)の年代をAl-Mg系の年代と直接比較する、(2)26Alを熱源と考え、隕石母天体の熱史(これも主にMn-Cr系年代で解明される)をとおして、間接的に比較する、の2つの方法があります。後者の方法については最近、論文がin pressになっています。この様にMn-Cr系の年代は重要なのですが、2次イオン質量分析計を使って測定をする場合にはMn+とCr+の相対感度を正確に決める必要があり、そのためには、良い標準試料が必要です。この良い標準試料の作成が難しいために、世界的に見ても、研究が滞っていました。幸い、実用的な標準試料の作成に成功し、炭素質隕石中の鉄に富むオリビンの年代測定ができました。この結果は、26Alが一様に分布していたという考えを支持しています。 今後は、測定がより困難なエイコンドライトの測定を行うことになります。現在、鉄に富んだオリビンを含む、3個のエイコンドライトを準備しています。小さなものでは5ミクロン程度の粒子サイズしかないので、測定は簡単ではありませんが、うまくできることが確認されれば、さらに多くのエイコンドライトを測定することができます。これらのエイコンドライトは、長石が共存しているので、Al-Mg年代とMn-Cr年代を直接比較することができます。 以上のような測定をまとめることにより、太陽系における26Alの分布の一様性を確認できれば初期太陽系の歴史はほぼ解明されたことになります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は懸案となっていた標準試料の作成に成功しました。まだ試料の一様性に多少の問題がありますが、10~20ミクロンの大きさのオリビンで、2次イオン質量分析に適したMnおよびCrの濃度ものを作成することができました。これを使って測定をおこなったところ、まずMn+/Cr+の相対感度にクレーターの深さ依存性があることを見出しました。これは炭酸塩の場合にはすでに知られたことではありますが、測定は標準試料と隕石試料で同じ時間行うことが重要であることが確認されました。また小さな領域の測定を可能にするために、1次イオンビームの大きさをアパーチャーを使って絞ったところ、Mn+/Cr+の相対感度がイオンビームの大きさに強く依存することが判明しました。これは、Mn+/Cr+の相対感度の変化は、2次イオンビームの広がりがMnとCrで異なるために生じていることを示唆しています。これまで謎だった、相対感度を決定するメカニズムを理解できたのは大きな進歩です。この知見に基づいて、まず比較的大きなオリビンを含み、測定のやりやすい炭素質隕石中のオリビン試料の年代測定を行いました。その結果、CVというグループの鉄に富んだオリビン(母天体中の水質変成で作られる)の形成年代が解りました。これに基づいて求めた母天体の形成年代は、26Alが太陽系に一様に分布していたと仮定して、天体の熱変成時の最高到達温度から求めた母天体の形成年代と矛盾しません。これはCVという隕石について、本研究の目的が達成されたことになります。今後はよりエイコンドライトを対象として、小さな領域の分析(より難しい分析)を行うことになります。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の成果を発展させるために2つの課題があります。一つはより良い標準試料を作成することです。2013年度に作成したものは、分析できる領域が狭く、組成もやや限られていました。今後はより広い面積を分析できる試料を作成し、その組成もより広いFe/Mg比のものを作成し、Mn-Cr年代測定がより汎用の年代測定系になるように努力します。2つ目の課題はエイコンドライトの測定を行うことです。エイコンドライト中のオリビンはサイズが小さいので、より小さな1次イオンビームを使って測定することになります。この時にMn/Crの相対感度がビームサイズに依存して変化するところまで確認できていますので、あとは測定時間を長くして、年代測定の精度を向上させる必要があります。また、エイコンドライトには長石が含まれていますので、そのAl/Mg系の年代測定をしてMn/Cr系の年代と比較します。この様にして各種の年代測定系で求められた年代が相互に矛盾がないことが確認できれば、本研究の目的は達成されたことになります。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
標準試料の作成に手間取っていたために、予定していた国際会議への参加を1つ取りやめたため、旅費が少なくなりました。また、コンピュータの更新を行う予定でしたが、新機種の発売を待つために見送りました。 研究成果があがっていますので、2014年度は2つの国際学会に出席する予定であり、その旅費が必要です。見送っていたコンピュータの購入も行います。またより良い標準試料を作成するために、試薬などの購入も必要です。
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Research Products
(21 results)