2013 Fiscal Year Research-status Report
最先端電顕法による造岩鉱物の元素分配に関する実験的研究
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24540526
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
藤 昇一 福岡大学, 理学部, 助教 (20380595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中牟田 義博 九州大学, 総合研究博物館, 准教授 (80128058)
三宅 亮 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10324609)
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Keywords | 元素分配率 / 造岩鉱物 / ALCHEMI法 / 分析電子顕微鏡 / エネルギー分散型X線分光検出器 |
Research Abstract |
本研究課題実施2年目となる本年度の主な研究実績としては、以下の点を上げることが出来る。1)粉末X線解析結果に基づくリートベルト解析の実施。本研究で対象とする輝石や、かんらん石の結晶構造と比較して、その複雑さにおいて遜色のない菫青石で成功した。より難しい練習問題をこなした事によりガンドルフィーカメラによるデータ解析への取り組みも比較的容易であると考えている。なお、この成果については顕微鏡学会等で公表する予定である。2)gatan社製PIPS-イオン研磨装置への低温ステージの導入。造岩鉱物に対しては研磨中の温度の上昇により元素分配率が影響を被る可能性が懸念されたため、検討を加えた結果、本装置の導入により正確なデータの取得が期待される3)偏光顕微鏡の導入ならびに観察。本研究においては試料の均質性の評価、および特徴的微細組織の選定に必須であり、既に解析領域の選定を開始している。4)走査透過電顕法による元素分配率の導出。分担研究者である京都大学、三宅准教授と走査透過電顕法の解析によっても元素分配率の導出が可能である事を学会で報告した。この成果は、本研究で取得した元素分配率の比較対象が加わった事も意味している。5)電子線回折ならびに高分解能像シミュレーションソフトウェア、jemsの導入による結晶方位の検討。本研究経費で導入したjemsは動力学的回折効果を考慮した回折パターンのシミュレートが可能であり、ALCHEMI法により適した入射方位を過去の研究例と比較しつつ検討を加えている。6)元素分配を決定する造岩鉱物試料の充実。 以上の様に本年度の実績は、本課題の目的である造岩鉱物の元素分配の決定からすれば、透過電子顕微鏡およびX線回折による元素分配率の決定の為の準備が整った事を意味している。従って、最終年度においては核心をつくデータの取得を速やかに進める事が出来ると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は実施2年目に当たり、当初計画では具体的な成果をあげる予定であったが、研究代表者の所属研究室の異動により、研究実施環境の変化が大きく、本研究計画を遂行するために再整備をする必要があった。その結果、本研究を遂行するにあたって、異動前の環境とくらべても遜色のない環境を整える事が出来ている。 その一方で、本研究計画の当所の既定路線であった、1)ガンドルフィーカメラによるX線回折実験、2)ガンドルフィーカメラ試料からの集束イオンビーム(FIB)による電子顕微鏡試料の作製、3)分析電子顕微鏡を用いた元素分配率の決定、については遅れを生じている。 これらの理由としては1)ガンドルフィーカメラ用試料の作製には、岩石薄片を作製し、それらの均質性を偏光顕微鏡で確認する必要がある。しかし、上記の薄片作製環境の整備、さらに偏光顕微鏡の導入に時間を要したため、本実験に遅れを生じた。これらの点については、本年度の研究経費の充当により整備されたため、現在、試料作製を進めつつある。2)FIBによる電子顕微鏡試料の作製は、ガンドルフィーカメラでの実験が遅れた影響を受けている状態である。そこで、現研究室に設置されているイオン研磨装置での透過電顕試料の作製も平行して開始した。学内予算により整備された冷却ステージを用いる事で、本研究で目的とする元素分配について、より正確なデータの取得が可能であると考えている。3)の分析電子顕微鏡によるALCHEMI実験については、年度末まで学外経費による分析専用ホルダーの導入を画策したため遅れを生じた。結果としては導入に至らなかったが、研究全体から見れば同一のホルダーでデータの一貫性および再現性を担保する事が重要であり、当該ホルダーの導入ならびに用いた実験を待つ必要があったためデータの取得が遅れた次第である。今後は既存の2軸傾斜ホルダーによる実験を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に照らし合わせれば、本年度までの進捗状況はいささか遅れている。特に、核心部分である元素分配率の測定に関しては、最終年度において、測定対象の鉱物種、測定点数およびそれらの精度の検討が急務である。 その一方で、核心部分を取り巻く状況については、本年度までにほぼ状況を整える事が出来た。また、イオン研磨装置への冷却ステージの搭載や、走査透過電顕像による元素分配率の決定法については、本研究計画策定当初の状況から見れば付加的なものであり、研究環境ならびに試料作製手法の選択肢を充実させ、今後のデータ取得における発展が期待できるものと捉えている。したがって、最終年度ではこれらの充実した環境を利用して、より高度かつ質の高い成果へと結びつけるべく研究を進めたい。 したがって、今後の進め方としては、これまでに集積した造岩鉱物試料を、集束イオンビーム法による試料作製だけでなく、試料冷却イオン研磨法も取り入れる。特に、後者の試料作製法は本研究の中心となる研究代表者の研究室において実施可能であることも、時間の短縮、多様な試料の状態への柔軟かつ適切な対応を可能とするため、限られた時間の中ではあるが飛躍的な本研究の進展が期待できると捉えている。 さらに、2年度目である本年度において本研究費で導入した偏光顕微鏡ならびにシミュレーションソフトウェア、jemsについてはその使用方法についても習熟しつつある。偏光顕微鏡については、これまでの研究代表者の研究環境と比べ従来と同等以上に利便性が高くなった。さらにjemsについては、ALCHEMI法による席占有率を導出する実験において本質的に重要な、入射電子線の結晶学的方位を結晶構造だけでなく動力学的な見地からも予想できるという特徴をもつため、過去の研究でいまだに見出されていない、有効な実験条件を見出すべく、精力的に仮想実験を重ねている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、本年度の当初計画にある分担研究者である京都大学理学部での実験を見送ったためである。具体的には、代表研究者の研究室において試料作製環境の整備が本年度半ば以降まで必要であったこと、ならびに年度末まで、二軸傾斜分析用ホルダーの取得のために年度末まで画策したため、ALCHEMI実験に遅延を来した事による。特に本研究においてはデータの一貫性、再現性の観点から同一のホルダーをもちいたデータの取得が極めて重要であると考えた次第である。 また計画では、研究代表者の研究室で用いている汎用分析電子顕微鏡のデータを、京都大学が有する最先端大面積X線分光検出器で取得したデータとの比較が最重要課題の一つであるため、その基本と位置づけられる汎用分析電子顕微鏡のデータは必要不可欠である。 したがって、この度の次年度使用額が生じた事は研究の意義から計画に沿っていると考えている。 上記の理由ならびに本研究計画より、本年度生じた次年度使用額は、京都大学での最先端分析検出器を用いた分析実験の為の旅費に充当する事が妥当であると考えている。さらに、京都大学においては、電子顕微鏡による分析実験だけでなく、ガンドルフィーカメラで用いた試料からの電子顕微鏡用試料の作製も、当初計画に織り込んでいる。 したがって、具体的な使用計画としては、集束イオンビームを用いた試料作製、ならびに最先端分析装置によるALCHEMI実験、および、それらの実験とデータ解釈の為の意見交換を分担研究者である京都大学、三宅准教授と行うための旅費に充当する計画である。
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[Journal Article] Solid Solution Alloy Nanoparticles of Immiscible Pd and Tu Elements Neighboring on Rh: Changeover of the Thermodynamic Behavior Hydrogen Strage and Enhanced CO-Oxidizing Ability2014
Author(s)
Kohei Kusada, Hirokazu Kobayashi, Ryuichi Ikeda, Yoshiki Kubota, Masaki Tanaka, Shoichi Toh, Tomokazu Yamamoto, Syo Matsumura, Naoya Sumi, Katsutoshi Sato, Katsutoshi Nagaoka and Hiroshi Kitagawa
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Journal Title
Journal of the American Chemical Society
Volume: 136
Pages: 1864~1871
DOI
Peer Reviewed
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