2013 Fiscal Year Research-status Report
赤外線スペクトルを利用したヘリウム衝突輻射モデルとプラズマ診断
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24540532
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
門 信一郎 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10300732)
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Keywords | 近赤外スペクトル / 衝突輻射モデル / 輻射捕獲 / ダイバータ模擬装置 / MAP-II |
Research Abstract |
ヘリウム原子の輝線スペクトル強度比を測定し、衝突輻射モデルを利用してプラズマの電子密度・電子温度を推定する、いわゆる「線強度比法」の利用が近年特に浸透してきた。その際、核融合装置のダイバータ領域や放電プラズマなど、電離度の低いプラズマでは、輻射場として自分自身の占有密度に影響を与える自己再吸収過程(輻射捕獲)の評価に重要な役割を担うことが指摘されている。しかしながら、基底準位と光学的に結合しているため共鳴吸収による輻射捕獲の効果を最もよく反映する1重項2P準位の占有密度ないしその空間的な広がりは可視分光の範疇では測定できない。そこで従来、分布形状を仮定して感受性を調べる、光線追跡計算を行う、1重項1 S - 2P(58.4 nm)の真空紫外分光を行う等のアプローチがなされてきた。 本研究では、1重項2P準位の新たな評価方法として、1重項2S - 2P遷移(2058.130 nm)の測光可能性を検討してきた。これまでに、ツェルニ・ターナー型分光器(SOLAR TII社製 MS3504i, f = 35 cm, 300 G/mm)とInGaAsリニアイメージセンサ(Hamamatsu G9208-256W)を用い、東京大学ダイバータ模擬装置MAP-IIにおいて計測に成功した。 近赤外分光により測定された1重項2P準位準位の占有密度は、主に電子衝突によって占有密度が決定される非共鳴準位にあるヘリウム原子に比べ有意に空間的広がりを有する分布であることが観測され、輻射捕獲現象の占有密度への寄与を実験的に証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関異動後、出張実験を行ってきた。実験時期の制限などで、十分なマシンタイムを確保するのはやや難しかった。しかしながら、既に取得されたデータの解析、より詳細な理論的検討を続け、継続的な学会発表や論文の執筆を行うなど、研究そのものは前進している。
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Strategy for Future Research Activity |
衝突輻射モデルに輻射捕獲の空間分布の効果を組み込んだコードの実装が完成しているため、これをもちいたパラメータサーベイを行う。 これまでに得られた結果をまとめる。特に、理論的検討を進め、現象の扱いを一般化し、他装置における実験および解析の方針を提案できる知見を構築することを目的とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の組織異動のため、研究体制の再構築やマシンタイムの確保に猶予期間が必要となった。 本研究の最終年度である次年度は、装置の移設改修や再起動を計画しているため、その経費、出張実験や研究発表のための旅費、および論文執筆など、研究をまとめるために必要な経費として次年度使用額を合算し、使用する予定である。
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