2012 Fiscal Year Research-status Report
無衝突衝撃波中の電磁場による粒子加速と被加速粒子による不安定性の効果
Project/Area Number |
24540535
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
樋田 美栄子 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00273219)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無衝突衝撃波 / 非線形磁気音波 / 粒子加速 / 不安定性 / 粒子捕捉 / 多種イオンプラズマ |
Research Abstract |
磁化プラズマ中の非線形磁気音波の構造形成と粒子加速、ならびに加速粒子が引き起こす不安定性の効果を、理論と計算機シミュレーションを用いて研究している。今年度は、斜め衝撃波中の捕捉電子の効果、前進・後進衝撃波の構造形成、2種イオンプラズマ中の磁気音波における有限ベータ効果等について、以下の成果を得た。 1. 斜め衝撃波は一部の電子を捕捉し、それらを超相対論的エネルギーに加速できる。捕捉電子による不安定性の効果を、2次元電磁粒子シミュレーションと、衝撃波面方向に平均化した電磁場の中でのテスト電子の軌道計算を用いて詳細に解析した。そして、捕捉粒子が励起するホイッスラー波とその非線形発展によって、多次元電磁擾乱が大振幅となり、捕捉電子の解放と追加速を引き起こすことを明らかにした。また、その多次元効果は、外部磁場が強くなると促進されることを示した。 2. 磁場中の2つのプラズマの衝突による衝撃波の形成過程を2次元電磁粒子シミュレーションで調べた。2つのプラズマの初期相対速度と磁場が直角の場合は、イオンのサイクロトロン周期程度の時間で、1つの強磁場パルスが生成される。そして、そのパルスはイオンを反射することによって2つに分裂し、その後、前進・後進衝撃波へと発展する。今年度は、初期の時間帯で起こる変形2流体不安定性の成長と非線形発展を解析し、強磁場パルスの多次元構造とイオン反射に及ぼす影響を明らかにした。 3. 2種イオンプラズマ中の直角磁気音波の線形・非線形理論を有限ベータの効果を含めて拡張した。まず、KdV方程式の成立条件を、ベータ値と2種のイオンの電荷密度比・質量比の関数として表した。そして、高周波モードの非線形パルスによる重イオン加速を考察し、加速の最大速度、ならびにその加速によって引き起こされるパルスの減衰率を導出して、それらのベータ依存性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
磁気音波の衝撃波による粒子加速には様々な機構が存在するが、今年度はまず、強磁場中の斜め衝撃波による捕捉電子の加速に注目し、捕捉粒子による不安定性の効果を解明することを目指した。空間2次元の相対論的電磁粒子シミュレーションとテスト粒子計算を用いて、斜め衝撃波中の電子の運動について詳しく解析し、不安定性が電子の解放と追加速をもたらすことを明らかにした。さらに、外部磁場が強くなると、この効果が促進されることも示した。そして、これらの成果を、査読付き論文2本として発表した。 また、外部磁場が比較的弱い場合の粒子加速において重要となる衝撃波面後方の構造に注目した研究も開始した。2つのプラズマの衝突による前進・後進衝撃波の形成過程を2次元電磁粒子シミュレーションで追跡し、変形2流体不安定性の効果を解析した。そして、この成果を論文としてまとめ、投稿した。 さらに、2種イオンプラズマ中の磁気音波の線形・非線形理論を有限ベータの効果を含めて拡張し、この成果を査読付き論文1本として発表した。 以上のことより、現在のところ研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、相対論的電磁粒子シミュレーションを用いて、無衝突衝撃波による粒子加速についての研究を進める。特に、より大規模なシミュレーションを長時間行って、被加速粒子が引き起こす不安定性の効果を解明する。 加速機構には粒子の種類、外部磁場の強さによって異なる様々なものがある。24年度は強磁場中の斜め衝撃波による捕捉電子の加速の研究に重きをおいた。そして、捕捉粒子が引き起こす不安定性の効果を明らかにした。今後は、その効果が重要となる条件を明確にするため、さらにシミュレーションを積み重ねる。 また、上記の研究は一つの衝撃波の波面付近に注目したものであったが、磁場が比較的弱い場合は、衝撃波面の後方を含む大域的構造が重要となることが、1次元電磁粒子シミュレーションで指摘されている。本研究では、2次元電磁粒子シミュレーションで、その大域的構造を解析する。特に、前進・後進衝撃波の形成とその多次元構造に注目する。24年度にこの研究を開始し、衝撃波の初期形成過程を明らかにしたが、より大規模で長時間のシミュレーションを行って、前進・後進衝撃波の伝播とそれに伴う粒子加速、加速粒子が引き起こす不安定性の効果を詳しく解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度は、研究自身は概ね順調であり、粒子シミュレーションとデータ解析を進めて、衝撃波中の捕捉電子による不安定性の効果などを明らかにした。また、その研究と並行して、シミュレーションコードの高速化とデータ保存の効率化を進めた。その結果、シミュレーション時間やデータを保存するためディスク容量等を、当初予定していたよりも抑えることができた。そのため、計算機の購入やスーパーコンピュータの使用料等を、予定したよりも少なくすることができた。それらの経費を25年以降にまわし、より性能の高い計算機等を購入する。そして、それを使ってより大規模な粒子シミュレーションを遂行し、精度の高いデータ解析を進める。その結果を基に、衝撃波中の電磁場の多次元構造の形成機構と粒子の運動の解明をさらに進めていく。
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Research Products
(14 results)