2012 Fiscal Year Research-status Report
ACトラップされた大容量複合帯電微粒子による強結合プラズマ物性研究の新しい展開
Project/Area Number |
24540536
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
庄司 多津男 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50115581)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有本 英樹 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80242882)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 強結合プラズマ / 長距離相互作用 / 大域構造形成 / 液体プラズマ / 波動 / 非線形相互作用 / カオス |
Research Abstract |
今年度の研究で、多粒子の強結合プラズマの振る舞いを研究するために、これまで10^3個程度までしか閉じ込めが出来ななったACトラップを10^4-5個の大量の微粒子を閉じ込められるように改良する事に成功した。この大量に且つ長時間安定に(数日)閉じ込められた帯電微粒子にニッケル被覆した微粒子を混入させ、外部振動磁場によって一成分強結合プラズマ(OCP)の液体領域にある状態で協同現象としての波動を励起して分散を詳しく調べた。この結果気体ー液体に移行する時の分散式が実験で始めて求められ群速度の符号が正から負に変化する事が観測された、実験配位を正確に取り入れたシミュレーションを行い、これらの傾向が再現される事が分かったが、同時にシミュレーションでは見られない詳細な現象も起こっている事が確かめられた。これら液体状のプラズマは中性子性の外殻や重い惑星の中心で実現されているとされ、これらの物性に対する知見を与えるものと考えられる。 またこれら大量の微粒子の粒子間及び外場との非線形相互作用の結果として,閉じ込めパラメータによって帯電微粒子群の構造が様々に変化する現象が詳しく調べられた。閉じ込め周波数により大域的構造の変化の分岐現象やカオス的運動が新たに観測された。閉じ込め周波数を変化させて微粒子群の構造を観測して、AC電場の1周期における大域的構造変化を粒子群の密度分布を主成分分析によって低次元に落として解析し、周波数によって現れる非対称な構造、周期の異なる「硬い」外殻と「液状の」分離した構造などこれまでに報告されていない特異な構造変化が生じる事等が発見された。これらの非線形現象を理解するために計算機シミュレーションも平行して行われ、粒子の電荷にわずかな分布があると似た構造が生じる事が示唆された。これらの知見は統計や自然界の帯電量に分布を持つ強結合プラズマの物性に関連した物理として意義が大きい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、一成分強結合プラズマの集団現象もしくは巨視的振る舞いを研究する為に帯電微粒子数の大量化が必要とされていたが、これまで10^3以下であった数が電極等の改良で10^4-5にまで改善され、これまでになかった新しい現象が観測されるようになった意義は大きい。 2、また粒子の帯電量の制御のための新しいシステムを考案し、より正確で、さらに異なる帯電量の集団を閉じ込められるように出来た。電荷量と集団現象との関連等様々な研究領域が広がった。 3、強結合プラズマの協同現象としてのプラズマ波の分散式と強結合パラメーターとの関連が実験的に初めて求められ、これまでに理論的に予想されたものと初めて比較する事が出来た。 4、微粒子の大量化のおかげで、新しい大域的構造、構造のカオス的変化など新しい現象が発見された。 これらの結果は予想以上であり非常に大きな進展があったと結論される。
|
Strategy for Future Research Activity |
1、電極に印加するAC電場の周波数、電圧、粒径、粒子数を変えて微粒子の速度分布などを計測し、ボルツマン統計からのずれと微粒子数、相互作用の強さの関係などを調べ、大偏差統計、Tsallis統計など非ボルツマン統計として提案されている理論との比較を行なう。クーロン多体相互作用のため速度分布のテイルの部分がガウス分布より外れてくると予想されているが、これまでの実験では輸送係数との関係は明らかにされていないので重要な知見となる。ボルツマン統計から外れる部分は粒子数が少ないため、これと等価に長時間の観測(数時間におよぶ)、統計処理を行い精度の良い総計のずれの評価を行う。このためにAC電場の揺らぎの精度や周辺大気の揺らぎの制御等を押さえた環境を作り、実験を行う。 2、微粒子径、帯電量の異なる微粒子をACトラップ内に閉じ込めて、強結合プラズマの混合の実験を行う。高密度天体では価数の異なる強結合イオンが混在しておりこれらが分離、または混合状態にあるかはstaticな平衡状態の配位は計算されているが、途中のダイナミックスが分からないのでどういう状態が実現されているかが問題となっている。実験では最初から混合状態でトラップしたり、第一成分のトラップされた微粒子群に外部から第2成分を混合させたりしてこのダイナミックスと長時間経たあとの平衡状態を比較して調べる。この為に異なる微粒子を順次帯電させ、トラップ領域に打ち込む方法を確立する。 これまでの成果を基に、実験を複雑系強結合プラズマの新しい物理、非線形.非平衡統計物理の解明として論文にまとめるとともに、微粒子の国際会議や非線形物理の会議で発表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の成果によって大量、多成分の帯電微粒子の閉じ込めが可能になり新しい現象が発見されたため、これらをさらに追求する為に 精度の高いAC(高電圧電源(トレックジャパン(株)609B-3)及びDC高電圧電源などを購入する予定である。また多粒子系の統計の実験のための粒径精度の高い20-100ミクロン径の微粒子、および磁場による制御の試みも行う為にニッケル被覆した微粒子等を購入する。 この他論文出版、研究会、国際研究集会での発表などに研究費を費やす予定である。
|