2013 Fiscal Year Research-status Report
ACトラップされた大容量複合帯電微粒子による強結合プラズマ物性研究の新しい展開
Project/Area Number |
24540536
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
庄司 多津男 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50115581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有本 英樹 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80242882)
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Keywords | ACトラップ / 強結合 / 帯電微粒子 / 大域構造 / 多体相互作用 / 非線形物理 |
Research Abstract |
昨年度のACトラップ装置の改良により、今までにない多量の帯電微粒子(1-10万個)が長時間安定(数週間以上)に閉じ込められるようになり、これを利用して今年度は多体相互作用の強い集団現象をより詳しく調べた。微粒子の個数に対する集団構造を調べた結果、少数の場合に結晶構造を維持している集団が粒子数の増加共にに固体状の外殻と溶解した液体状の内部構造に分離して行く様子がニ体分布関数等の評価等で明らかにされた。 この溶解状態の領域の体積、温度を求め、閉じ込め電圧とともに増加する事が観測された。またこれらの結果を粒子シミュレーションと比較した。粒子の溶解状態は電荷の完全にそろった粒子のシミュレーションでは起こらない事が示され、電荷の揺らぎが重要な要素となる事が示唆された。これらは中性子星などの強結合プラズマの物性にも共通する物理現象としての意義があると考えられ、より詳しいマクロな物性の計測が今後必要とされる。 このため、これまでの平面状レーザーによる微粒子構造の2次元観測を3次元化する必要とされた。平面状レーザーを微粒子の運動の時間スケールよりも高速で振動させてこれに同期をとった動画計測を行う事によって粒子の3次元軌道を観測する改良が完成した。 また帯電微粒子にニッケルコーティングしたものを使い、弱い振動磁場を一方向に印加した場合に振動磁場の周期よりも1/10以下の非常に遅い周期で微粒子群全体が定常回転することを観測した。またこの低周期の角速度の揺らぎも観測されており、カオス解析も進められた。 これらの非線形相互作用は、電磁場と相互作用する多粒子の非線形物理として興味深いテーマで、長時間観測が可能なこのような系の実験として他になく、共同研究者との理論研究による解明が進められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ACトラップ装置の改良により、今までにない多量の帯電微粒子(1-10万個)が長時間安定(数週間以上)に閉じ込められるようになり、多体相互作用する集団の巨視的な構造や動的振る舞いに当初予想していた以上の新しい現象が見られるようになったことは意義深い。 また3次元的な構造や動的振る舞いを見るための高速レーザースキャニング観測システムの開発に成功した結果、これまで分からなかった非対称な構造や微粒子の振る舞いを観測できるようになり、計画されていた以上の非線形の詳しい動的過程を研究できるようになったことは大きな進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究として 1、昨年度開発した高速レーザースキャニング観測システムを用いて、微粒子集団の溶解層と固層の構造変化を3次元的に観測して強結合プラズマの相変化、共存、境界層などのこれまで知られていないダイナミックスを解明する。 2、安定な溶解層の3次元的な微粒子軌道の統計的解析を行い、長距離力の多体相互作用する系の統計的性質を調べる。特に粒子の速度分布などを計測し、ボルツマン統計からのずれと微粒子数、相互作用の強さの関係などを調べ、大偏差統計(藤坂博一、日本物理学会誌54(1999)423)、Tsallis統計(C. Tsallis, J. Stat. Phys. 52, 479 (1988))など非ボルツマン統計として提案されている理論との比較を行なう。クーロン多体相互作用のため速度分布のテイルの部分がガウス分布より外れてくると予想されているが、これまでの実験では輸送係数との関係は明らかにされていないので重要な知見となる。 3、微粒子径、帯電量の異なる微粒子をACトラップ内に閉じ込めて、強結合プラズマの混合の実験を行う。高密 度天体では価数の異なる強結合イオンが混在しておりこれらが分離、または混合状態にあるかはstaticな平衡状態の配位は計算されているが、途中のダイナミックスが分からないのでどういう状態が実現されているかが問題となっている。実験では最初から混合状態でトラップしたり、第一成分のトラップされた微粒子群に外部から第2成分を混合させたりしてこのダイナミックスと長時間経たあとの平衡状態を比較して調べる。この為に異なる微粒子を順次帯電させ、トラップ領域に打ち込む方法を確立する。これまでの成果を基に、実験を複雑系強結合プラズマの新しい物理、非線形.非平衡統計物理の解明として論文にまとめるとともに、微粒子の国際会議や非線形物理の会議で発表する
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