2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダイレクト・アブイニシオ法による微視的溶媒和クラスターの実時間反応追尾
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24550001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田地川 浩人 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10207045)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | クラスター / イオン化 / 電子付加 / 溶媒和 / フェムト秒 / 溶媒再配向 / DNA損傷 / SN2反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
微視的溶媒和クラスターは、少数の溶媒分子によって取り囲まれた分子からできるクラスターであり、溶質の周りの溶媒を部分的に切り出したナノスケールの溶液といえる。最近、クラスターサイズを選別したクラスターを任意に生成する実験が可能となってきており、レーザー分光法を組み合わせることによって、その反応ダイナミクスについての詳細な解明が可能となってきている。これに対し、溶媒和クラスターに関する理論的なアプローチは極めて少ない。 本研究課題では、ダイレクト・アブイニシオ法を、微視的溶媒和クラスター内での反応ダイナミクスの理論解明に応用した。特に、光照射後の反応を実時間で追尾することにより、微視的溶媒和の効果を理論的に予測した。 (1)DNA塩基対プロトン移動反応への微視的溶媒和の効果 DNA塩基対が紫外線照射されると、水素結合に沿ってプロトンが移動し、DNA欠陥が生じ、癌化への引き金になる。DNA塩基対は数個の水分子が配向しているが、従来の研究では、この水分子の存在は無視されてきた。本研究では、DNA塩基対のモデルであるアミノピリジンダイマーをモデルとして、光照射後のダイナミクスを理論的に取り扱った。特に、プロトン移動速度への微視的溶媒和の効果を解明した。水分子の電子供与により、プロトン移動速度が、促進することを解明した。 (2)DNA損傷チミンダイマーの修復反応への微視的溶媒和の効果 DNA に紫外線照射すると DNA中の隣り合ったチミンが2量体(チミンダイマー)を生成し、2本鎖 DNAの片方の鎖に損傷が起こる。この損傷が引き金となって細胞の変異が誘発し発癌が惹起する。本研究では、チミンダイマーの修復反応をダイナミクスをダイレクト・アブイニシオMD法により明らかにした。特に、修復反応の初期過程への微視的溶媒和の効果を解明した。溶媒分子の電子供与により、DNA修復反応が、加速することを解明した。
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