2013 Fiscal Year Research-status Report
ダブルパルスインパルシブ共鳴ラマン励起による分子振動制御
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24550004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 信一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10262601)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木場 隆之 北海道大学, 情報科学研究科, その他 (40567236)
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Keywords | RIKES / ラマン誘起カー効果 / 二硫化炭素 / アルコール / libration / デコヒーレンス |
Research Abstract |
近年、化学反応のコヒーレント制御(M. Dantus et al., Chem. Rev. 104, 1813 (2004))や、分子の電子・振動状態を量子ビットとして用いた量子コンピューティング(Y. Ohtsuki, Chem. Phys. Lett. 404, 126 (2005))など、超短レーザーパルスを用いて原子・分子の波動関数を直接制御しようとする試みがなされている。これらの量子制御を実現するにあたって、原子分子の波動関数がどれだけ長い間コヒーレンス(可干渉性)を保持できるかが重要となる。したがって、コヒーレンスが失われてゆく過程(デコヒーレンス(位相緩和))のダイナミクスの解明、さらにはその抑制が必要とされている。しかし気相に比べて凝縮系でのコヒーレント制御に関する実験的な研究はまだ数少ない。これは、凝縮系においては外界からの相互作用が多様であり、高速でデコヒーレンスが起こることが原因となっている。凝縮系でのデコヒーレンスメカニズムを明らかにする一環として、二硫化炭素とアルコールの二成分溶液系のRIKES測定をおこなった。二硫化炭素とアルカンの二成分溶液のRIKES信号については、過去に報告(Scondinu et al, J. Phys. Chem. B 107, 44 (2002))があり、アルカン中に生成される二硫化炭素二量体のlibration運動と関連つけた議論がなされている。今回の我々の研究ではアルコールのヒドロキシル基の運動がRIKES信号にもたらす影響について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
25年度の研究目的の達成度としては60%程度である。 理由としては、人的不足(レーザー実験補助のできる大学院生がいないこと)があげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の方向性をデコヒーレンスの理論と計算による解析検討に振り向ける。 25年度に得られた二硫化炭素・アルコール二成分溶液系のRIKES信号について、分子動力学法により検討する。特にアルコールクラスターの形成と、クラスター中の二硫化炭素二量体のlibration運動について、アルカン・二硫化炭素系との比較をおこない、ヒドロキシル基の運動の影響について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分子材料化学研究室から高分子機能化学研究室への異動に伴い、当該テーマへの実験補助の学生の確保が困難になり、他テーマにさくエフォートが増大したことが大きな理由である。 人的不足をおぎなうために、計算化学的観点から当該テーマの研究をおこなう。そのために計算機サーバーの増設に用いる。
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