2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550011
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牛山 浩 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40302814)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 理論化学 / 不均一触媒 / 表面化学 / 欠陥 |
Research Abstract |
具体的なターゲットとして、酸化タンタルに窒素をドープした材料を電極触媒として取り上げ、表面での酸化反応機構の解明を目指して研究を進めた。本研究で具体的に取り上げる触媒は、申請者の所属する専攻の教員により実験的にも検討が進められている材料であるので、実験結果等も比較的入手しやすい。特に、実験研究を行っている研究室と我々理論研究を進めているグループが同一専攻内にある利点を活かすため、実験結果と理論計算から得られた結果を頻繁に比較検討しつつ議論を深めたりしながら研究を進めた。この結果については、現在論文を準備している。 こうした具体的な問題の検討と並行して、電子動力学法を上述の表面吸着系に適応するため、多次元化に向けた理論とプログラムの開発へと研究を進めた。我々が孤立分子系に適応した方法では、電子ダイナミクスを実行できる系のサイズはその大きさが限られてしまうことと、多くの計算時間が必要なために長時間の時間発展が行いにくいという点があり、そのままでは表面吸着系に適応できない。こうした問題点に関して、我々は密度汎関数理論を基に、コーン-シャム軌道で電子波動関数を展開する方法を採用し、計算に必要な電子波動関数の核座標微分を数値微分で求める等の工夫をすることで、大規模系の長時間時間発展ができるようにプログラムの開発を行った。方法論の開発に際しては、我々が以前開発した方法と計算精度等を比較しつつ、ジボランの系を例に、電子移動と化学反応の関係やその取り扱いについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、具体的な系への応用ができたと考えている。基礎理論の開発に関しては、少し遅れ気味ではあるが、確実に進んでおりほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、基礎理論の開発及び、具体的な系への応用を進めていく。具体的な応用に関しては、できれば前倒しで進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度以降は、我々が開発した電子ダイナミクスの方法を、電極触媒反応や光触媒反応に応用し、表面反応における電子授受について調べる。はたして、表面反応の際に電子の流れはどうなっているのか、実時間の電子ダイナミクス計算から明らかにする。 電極触媒反応に関しては、電子の実時間ダイナミクス計算をした時の結果と前年度の計算結果がどの程度変わるかを手掛かりに、非断熱過程の取り扱いの必要性について議論する。また、遷移金属表面へのCO吸着で議論されるような、ドネーション・バックドネーションといった現象が、実時間ダイナミクスではどのように理解できるのかについて検討を行い、表面反応の実時間での理解を進める。電荷層モデルや有効遮蔽体法(ESM法)を用いるなどして、電極電位の影響を考慮し、現実系でのシミュレーションを目指す。こうした研究に際しては、単なる数値計算に終わらず、独自の方法論を構築し、新しい現象を見出しながら、物質科学全体の知識として後世に残る研究を目指していきたいと考えている。さらに、こうした研究を通して、理論化学の持っている可能性を広げ、周辺分野への応用を進めていきたいと考えている。 また光触媒への応用に関しては、酸化チタン表面における光励起分解反応の理解を目指し、「酸化チタン表面が吸収した光が、どのように電子分布を変化させ、どのようなタイミングで有機物等の吸着分子へと移動し、そして分解反応を起こしていくのだろうか」を明らかにしていく。
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Research Products
(2 results)