2012 Fiscal Year Research-status Report
微小空間中の分子混合状態のマクロ・メソスケールからの解明
Project/Area Number |
24550017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
飯山 拓 信州大学, 理学部, 准教授 (30313828)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子混合状態 / 微小空間 / ナノ空間 / マクロ・メソスケール / X線小角散乱 / 吸着等温線 / 多成分 / X線回折 |
Research Abstract |
微小空間中では、強調された表面-分子間ポテンシャルと、分子数個分にまで制限された空間の制約効果によって、通常とは異なる分子状態が生じる。微小空間中の分子混合状態は、その重要性にもかかわらず、実験的困難のためにその解明が十分に進んでいない。本研究は、成分別の吸着量を簡便にかつ精度よく決定する新しい方法を確立し、これを用いた2 成分系の吸着量測定と、in situ 条件におけるX 線小角散乱測定によって、微小空間中の分子混合状態を解明することを目的とする。 本年度は、当研究室で開発した圧力フィードバック吸着量測定装置に、新たに組成分析センサーと複数のガスの導入機構を加え、多成分吸着系に対応した新たな測定機構の開発を行った。ガス種による流量係数の違いや、混合比依存性などの困難が生じたが、測定法は概ね確立し、精度や測定圧力範囲を向上させるための再度の改良を前倒しして行い、実際の測定をすでに開始している。検討は現在、活性炭-水-エタノール系について行っており、単成分吸着系の測定結果からは得られない、微小空間系独自の混合状態が生じていることが等温線測定から明らかとなった。また等温線からのマクロな情報、今後行う予定のX線回折からのミクロな情報を補完しつなぎ合わせるためのモンテカルロ法による分子シミュレーションのプログラム開発を開始し、これも混合状態の検討が可能な段階に達している。次年度以降の研究において、これらを組み合わせることによって、系を構成する分子数が少ない状態での分子の混合状態について明らかとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、成分別吸着測定機構の構築および測定法の検証、およびバルクで混和する組み合わせの混合吸着系についての検討であった。上記のように、圧力フィードバック機構を用いた吸着量測定装置を混合吸着系に適用することに成功し、ハードウェアの最適化を進めることができた。今後種々の系に対応可能な測定手順を確立し、ソフトウェアの自動化、最適化を進めることで、測定効率を上げることができるだろう。検討は現在、代表的な「バルクで混和する組み合わせ」である水-アルコール系についての実測に進んでいる。装置の最適化を優先したため、予定していた細孔径の異なる系への適用は行うことができなかったが、コンピュータシミュレーションの適用の準備は前倒しして進めることができた。以上の進行状況から、概ね順調な進展が達成できているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
事前の計画に従い、吸着等温線の適用を種々の固体-分子の組み合わせに広げ、一般的性質を明らかにする。混合吸着系は2成分それぞれの分圧、温度など対象とすべきパラメータが多く、一般的な単成分の吸着等温線測定に比べ非常に長い時間を要するので、系の選択は慎重に行う必要がある。等温線測定によって振る舞いが明らかとなった系から順にX線小角・広角測定によるメソ、ミクロスケールからの解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の一部が予定よりも安く購入できたために、次年度使用額が生じた。 成分別等温線の測定手法の確立は順調に進展しているので、X線測定のための接続部分、制御機構の構築を優先して進める。また等温線測定のために必要なガスセンサーの消耗部品の交換が必要であることが分かったので、これら消耗部品の購入も本予算より行う。
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