2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24550020
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
関野 秀男 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40335104)
|
Keywords | 多重解像度多重ウェーブレーット / madness / 応答関数方程式 / ジェネリックコード |
Research Abstract |
一般分子の分極率算定プログラムコード開発のため、公開ソースプログラム madness を開発の基盤へと移行し、その中の量子化学計算モジュール moldft のフレームワークで分極率算定モジュール response を構築している。応答関数方程式の解法に関するモジュール response は、moldft の中の Hartree Fock / Density Functional Theory 計算を終了したあと実行されるが、これらとの違いは、応答関数方程式が線形であること、連立方程式となっていることのみで、変数空間の大きさ、基本演算などは moldft のアルゴリズムとほぼ同様であり、同じ equation solver を踏襲して行うことが可能である。 madness は主にアルゴンヌ国立研究所(ALCF)(シカゴ)及びストーニブルック大学(SBU)(ニューヨーク)のグループによって開発されており、本研究室で主に開発された response function 算定の部分との整合性をとるため、大学院学生1名が3か月あまり両研究機関に滞在、実装作業を行った。然し、SBUグループはテネシー大学 / オークリッジ国立研究所(ORNL)から本年度移ったばかりのため、初期の予想より基本的プログラム整備に時間を費やすことになり、また、ALCF のグループは、プログラム開発をブルージーン(IBM)上で行っているため、本来の開発環境である ORNL のスーパーコンピュータ jaguar や、日本のスパコン上でも動くジェネリックなコード開発にかなりの時間を費やすこととなった。 現在、我々のグループは「京」やそれらの環境で高効率を発揮できるジェネリックコードの、次世代教育用ミニスパコンシステム(豊橋技術科学大学情報メディア基盤センター / 平成25年度より稼働)への実装、効率検証を試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
特殊な分子系での動的分極率を算定できるプログラムは実装できているものの、「研究実績の概要」で述べたように、日米におけるかなり異なる超並列計算環境に対するジェネリックなコード開発に大幅に時間を割いてしまったため、各プラットフォームでの効率実験が予定よりも遅れてしまった。また、平成25年度4月から稼働予定であった豊橋技術科学大学の次世代教育用ミニスパコンシステムの実動開始が遅れたことも原因の一つである。然しながら、特殊な分子系に対しての分極率計算が可能なプログラム実装には成功しているため、そのコードを使用し、リファレンス計算(完全基底による見積もり)を行った。その結果、共鳴領域に近づいた時の分極率算定に、従来法であるガウシアン基底を用いた方法の問題点について指摘することができている。但し本プロジェクトの主目標は、超並列環境での一般分子系での分極率算定プログラム開発であるため、残念ながら遅れをとっていると判断せざるを得ない。
|
Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」で示した、ジェネリックコードの開発実装の遅れを取り戻すのが最大の焦点である。その実現のため、ALCF や SBU のグループとより緊密な連絡を取り合い、ジェネリックコードの完成を急ぐ予定である。同時に、独立に開発した特殊分子系のコードにより、いくつかの近共鳴領域での分極率算定の計算を行い、ガウシアン基底による算定法の問題点について具体的な調査を行う。また、実際に巨大系の計算で計算量のボトルネックになると予想される convolution 部分の解析を同時に進めていく。さらに MRMW を用いた near completeness 計算では、ヘルマンファインマン定理が満たされるため、分極率以外の計算においても多くの利便性が認められる。そのことに関する基本的な研究も同時に行っており、報告しているが(下記参照)、同様な応用計算も今後ともに行う予定である。 Hideo SEKINO, Akira MATSUMURA, Yukina YOKOI, Tetsuya KATO, Complete space quantum chemistry by Multiresolution Multiwavelet basis set, Int. J. Wavelets Multiresolut Inf. Process., 2013, 11(4), 1360008.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ジェネリックコードの完成のため25年度中にALCFやSBUを訪問し、共同研究を行う予定であったが、大学での業務と国内スパコンでのプログラム開発に時間をとられ、実現することができなかった。その残額は26年度にそれらの機関を訪問する費用および国際学会参加に充てる予定である。 プログラム開発のための、High performance 計算環境でのジェネリックなプログラムの実装ならびにテストが本プログラムの要となるため、26年度は主としてこれに従事する学生への謝金やコーディング諸費用、国際及び国内学会における成果発表への使用を予定する。なお MRMW 法によるプログラム開発は国内外でもいまだに少数派であるが、multi-resolution 基底によるプログラム開発を進めている日米欧の研究者によるワークショップを、Paris(2014年7月)にて行う予定である。また、計算分子科学拠点(TCCI)の開催する、ポスト「京」インフォーマル研究会(2014年5月)で、非ガウシアン基底関数量子計算の意義について発表する予定である。
|