2013 Fiscal Year Research-status Report
グラフェンへの気体吸着による物性制御に関する理論的研究
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24550024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川上 貴資 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30321748)
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Keywords | グラフェン / 酸素吸着 / スピントロニクス / 磁性 / 強相関電子系 / 分子軌道法 / フェナレニル / ゼトレン |
Research Abstract |
本年度では、初年度と同様に酸素分子の吸着構造の解析を行ったが、吸着の別の可能性を探るために、(b)有限サイズのグラフェンでのエッジ部位への吸着に関して取り扱った。これら、エッジ構造は様々な形(...C, ...C-, ...C-H等)で存在し、特にスピン源に関して性質が異なる。そこで、特に安定ラジカルであるフェナレニル分子を採用して、エッジ構造の良いモデル化とした。このスピンと、酸素分子の三重項スピンとの相互作用の解析に、我々の開殻系での分子軌道法計算手法を適用した。先の榎グループでの実験結果では、酸素ガスを入れたり抜いたりすることで、グラフェンの電子物性変化の完全な可逆性が報告されているので、この事実が我々の計算結果を評価する上での良い指標である。そこで、特に可逆性の観点で我々の計算結果の吟味を進めた。 加えて、このフェナレニル分子を拡張した、フェナレニル二量体やゼトレンでの解析を進めた。特に、前者は空間的なスピン間相互作用が、後者は分子内のスピン間相互作用が特徴的である。これらは、開殻一重項分子であり、全体のスピン多重度は一重項であるものの、そのスピン間の結合状態が開殻的であり、非常に興味深い性質を示した。例えば、開殻性を定量的に示すケミカルインデックスを算出を通じて、この系の本質に迫った。これらの分子に、三重項酸素を接触させた場合、分子内で打ち消しあっているスピンが、酸素の揺動を受けて、スピン密度が出現し、その性質を発現してくることが判明した。これは、これらの系に特に特徴であり、最初の命題である単層グラフェンへの酸素吸着の現象で、大きく関与してくると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単層グラフェンに関しては、非常に興味深い電子物性が期待されており、とりわけ次世代のエレクトロニクス材料として期待されている。さらに、炭素構造がナノメータスケールの微少素片になった場合には、磁性スピンの局所磁性が生じることで、よりスピントロニクスの分野での活躍が期待される。これらの系に関して、申請者は、そのチューニングの強力なアプローチの一つとして、グラフェンに気体分子を積極的に曝露して、そのグラフェンの物性(光学物性・電子物性・磁性)を測定する研究に着目して、それを分子軌道法でアプローチを強力に実行することができた。 このプロセスの次の展開として、グラフェンのエッジ部分のラジカルをモデル化した、フェナレニル分子を導入した。更に、フェナレニル二量体やゼトレンも導入し、開殻一重項分子としての性質の解明も行った。特に、三重項酸素を接触させた場合、分子内で打ち消しあっているスピンが、酸素の揺動を受けて、スピン密度が出現し、その性質が発現する様子を解明したことは、大きな成果である。また学会発表等に結果を積極的に公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、初年度から第2年度までの総合した結果として判明した酸素分子の吸蔵構造を用いて、(2) 電気伝導度の算出を行う。この測定値は実験により直接観測が可能である数値であるため、我々の計算の妥当性が直接的に評価できる。これに関係して、我々は既に電気伝導率を算出するための基礎的な理論開発とプログラム開発は終えており、その改良が本研究で行われることとなる。具体的には、ランダウアー公式を弾性散乱グリーン関数にて扱った伝導率計算プログラムを開発している。現在までの取り扱いではスピンの考慮が全くされていない閉殻系での計算を行うに留まっているが、これをスピンの影響を自由に勘案できる開殻系での計算が可能とするように改良する。市販の同類のソフトウェアとしての「ATK,TranSIESTA」(非平衡グリーン関数により閉殻系のみ計算可能)等も導入し計算結果を比較する。
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Research Products
(40 results)
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[Journal Article] Crystal structure and magnetic properties of honeycomb-like lattice antiferromagnet p-BIP-V22013
Author(s)
Hironori Yamaguchi, Shintaro Nagata, Masami Tada, Kenji Iwase, Toshio Ono, Sadafumi Nishihara, Yuko Hosokoshi, Tokuro Shimokawa, Hiroki Nakano, Hiroyuki Nojiri, Akira Matsuo, Koichi Kindo, Takashi Kawakami
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Journal Title
PHYSICAL REVIEW B
Volume: 87
Pages: 125120(1-8)
DOI
Peer Reviewed
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